この頃「腐った言葉」が多すぎる。
いわく「丁寧に説明する」
いわく「ご理解いただく」
ちょっと調子が異なっているが、昨年の原発事故の時から、
「ただちに健康に影響のある(放射線の)量ではない」と言う言い回しは、有名になった。 先日は、
「現時点では安全を確保している」というのもあった。
これを聞いて、シェークスピアの「マクベス」に出てくる魔女の予言を思い出した。
将軍マクベスは、夫人にせき立てられ、王を殺して自分が王位に就く。また、王の地位を守るために殺人を繰り返し、勇猛果敢だが小心であるため、自らの将来へ、ますます不安を膨らませる。
不安を鎮めるため、魔女たちのもとを訪れたマクベスに、魔女たちはこんな予言を授けるのだ。
「女から生まれたものはマクベスを倒せない」
「バーナムの森が進撃して来ないかぎり安泰だ」
女から生まれない人間はいない。
森の木が進軍してくる事はありえない。
マクベスは安堵する。
しかし、マクベスに暗殺された者の子どもたちやマクベスの暴政を憎む者が立ち上がり
マクベスの城へイングランド軍が攻めかかる。
味方も次々に寝返り、情勢はマクベスに不利になるが、彼は理性をなくし、「バーナムの森が動かない限り安泰だ」、「女が生んだものには自分を倒せない」という予言にすがって、自分は無敵だと信じて籠城する。
そこへ、バーナムの森が向かってくるという報告が入る。実はイングランド軍が木の枝を隠れ蓑にして進軍していたのだが、森が動いているように見えたのである。
マクベスは自暴自棄となって、戦場に出て行き、敵の将軍マクダフと対決する。
マクダフに対して、マクベスは「女から生まれた者には殺されない」と告げると、マクダフは「私は母の腹を破って(帝王切開)出てきた」と明かす。
最後の望みに見放されたマクベスは、破滅する。
魔女の予言には、あらかじめ二重の意味が織り込まれていて、最終的にはマクベスの解釈が誤っていた、というわけだ。
このような言葉のトリックは、昔からあるものなのだそうだ。
日本政府は、魔女が用いた言葉のトリックで国民を破滅に導こうとしている。
「丁寧に説明する」とは、「とにかく、しつこく言い続ける」という意味だし、
「ご理解頂く」とは、「どんなに反対しても強行する」という意味にほかならない。
言葉としての品格が地に落ちている。
腐っている。
言葉には魂が宿っている。
言葉を貶める政治は、魂を貶める政治だ。
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