スキーと言っても短く幅が広く、「スキー靴」など使わずゴム長靴で直接履くスキーだ。滑走面にはシール(本来はアザラシの毛皮だが、現代ではナイロン製のモヘアで代用している廉価版が普及している)が貼り付けてあるので斜面で後戻りせずにスイスイと登れる。
幅が広いので新雪にも埋まりにくい。長さが短いので立木の混み合った森林の中でも小回りが効き、冬の森を歩き回るには最適の道具だ。
ただし、これらの特徴を裏返せば滑るのはとても難しい。
短いので直進安定性が無い。幅が広いのとシールが付きっぱなしなので、斜面での滑り出しが遅く、緩斜面に入ったときの減速が大きい。
慣れるまでには相当時間がかかる。
羅臼高校には「野外活動」という科目があり、本来はこっちで取り上げたい種目なのだが、「野外活動」は三年生の選択科目なのた。三年生は、この時期自宅学習に入っていて授業を行っていない。しかし、羅臼では1月~2月でなければ十分な積雪にならない。
そこで便宜的に「野外観察」でスキーの練習をすることになる。
若い高校生たちの適応力は旺盛で、初めの頃は危なっかしい姿で滑る生徒が多かったが、最近では大部分の生徒が楽しそうに急斜面を滑り降りるようになった。
今日も、スキー実習を!と勇んででかけたのだが、高校の付近は風が強く、地吹雪になっていたので、直前で中止することにした。
さて、その代わりの授業をどうするか。
突然のことだったので、良いアイディアが浮かばず、昔から歌われているスキーの歌を教えることにした。
シーハイルの歌
作詞:林柾次郎、作曲:鳥取春陽
1 岩木のおろしが 吹くなら吹けよ
山から山へと われらは走る
きのうは梵珠嶺(ぼんじゅね)
今日また阿闍羅(あじゃら)
けむり立てつつ おおシーハイル
2 ステップターンすりゃ たわむれかかる
杉のこずえよ 未練の雪よ
心は残れど エールにとどめ
屈伸滑降で おおシーハイル
3 夕日は赤々 シュプール染めて
たどる雪道 果てさえ知れず
町にはチラホラ 灯(ともし)がついた
ラッセル急げよ おおシーハイル
この歌は、大正時代の演歌『浮草の旅』のメロディに、林柾次郎さんという方が新しい歌詞をつけたものらしい。
林柾次郎さんは明治31年(1898)、青森県五所川原の生まれ。東奥日報の記者をしていたという。歌人・俳人としても、多くの作品を遺しているそうだ。
1番に出てくる「岩木」は、いうまでもなく、岩木山のことだろう。
梵珠嶺(ぼんじゅね)とは、青森市と五所川原市の間にある標高460メートルくらいの梵珠山という山のことで、昔はスキー場があったようだ。
阿闍羅(あじゃら)山は、現在の大鰐スキー場のある山。大鰐スキー場は伝統のあるスキー場で、競技会などで有名である。
もちろん岩木山にも有名なスキー場がある。
シーハイル(Schi Heil)は、ドイツ語。「Schi 」はスキーのこと。「Sch Heil」で、「スキー万歳」といった意味になるらしい。
「スキーヤー同士がゲレンデや雪山で交わす挨拶」と言われている。(北海道ではあまり聞いたことがないけれど)
シュプールとは同じくドイツ語で、足跡・痕跡という意味だが、スキーの滑降した跡のことだ。
ラッセルは英語で、スキー・登山用語としては、雪が深い場所で道を開きながら進むことを言う。 (二木紘三氏のブログ参照)
歌は、例えば下記で聴くことができる。
http://www.youtube.com/watch?v=YvWmSMXFdzE
大地果てる所、知床で風のように暮らしている日常を記録しただけの、ささやかな日記