2012年3月17日土曜日
羅臼でウニを味わう不幸 流氷百話 20/100
今年、流氷の羅臼への到着は割に遅かった。だが、その後、長く居座り、海岸を埋めている。
羅臼の前浜では、2月からウニ漁が始まる。
この話は、あまり多くの人に知らせたくないのだが、羅臼産のウニを食べた人は不幸になると思う。あまりの美味さで、他の産地のウニの魅力が一気に色褪せてしまうからだ。
「何を大げさな!」と思うかも知れない。もちろん、ちょっと大げさに表現したのだが、あながち冗談ではない。
僕自身、羅臼で暮らす以前は、どこで獲れたウニでも、ウニであるだけでありがたく、「ハレ」の日には、奮発してロシア産の折詰めウニを買い、「ウニだ!ウニだ!」と大騒ぎして食べていたものだ。
しかし、今は、そんなウニをスーパーで見かけても、買う気が起きなくなった。
ウニは海藻を食べる。羅臼のウニは、前浜のオニコンブをたっぷり食べている。羅臼昆布は、昆布としても羅臼を代表する産物だが、それを食べて育ったウニが、優れた品質にならないはずはない。
そして、流氷の浮かぶ冷たい海は、バクテリアも少なく身の引き締まった健康なウニが育つというわけだ。
「羅臼以外のウニは食べられなくなる」という「不幸」を顧みず、流氷を眺めながらひたすらウニを想う日々は、今年も当分は続きそうである。
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