2013年1月27日日曜日
水の不思議 その3 雲はなぜ落ちてこないか 流氷百話26/100
「雲はどうして落ちてこないの?」
子どもに突然こんなことを訊かれたらどう答えたらいいだろう。
「雲が空に浮かんでいるのは当たり前。昔からそうだった。」と、まあ、こういう受け方もあるだろう。
しかし、それは力でねじ伏せているようなものであまりスマートではない。
落下運動は重力による加速度運動だが空気中(流体中)を落下する物体は、空気の(流体の)抵抗で一定の速度(終端速度)以上には加速されない。そして終端速度は表面積が大きいほど大きくなる。
つまり水滴が大きいほど落下速度は大きくなり、上昇気流の速度よりも落下速度が大きくなると(水滴が大きくなると)雨となって降ってくる。
では、元々小さな水滴だった雲の粒がどうして互いにくっ着き合って大きく成長するのだろう。
ここにも水という物質の特異な性質がある。水の分子は、互いに引き合いくっ着き合わずにはいられないのだ。なぜなら水の分子は、電気的な偏りが持っていて、プラスの部分とマイナスの部分がある極性分子と呼ばれる構造になっているからだ。
具体的には中央の酸素原子はマイナスに、両端の水素原子はプラスに電気を帯びている。だから分子同士が電気的な力で引き合ったり反発し合ったりする。
一般に物質は、大きな分子ほど融点が高い傾向がある。分子同士が引き合う力が強いからだ。だが、分子量18の水は、ほぼ0℃で凍る。そして、例えばアンモニアは分子量17だが融点は-77.7℃である。このように水の融点が他の同じくらいの大きさの物質と比べて飛び抜けて高い理由もここにある。
私たちの生活可能な温度の範囲内で水が氷になったり水に戻ったりしているからこそ流氷を楽しむことができる。これも巧まざる自然の恵みと言えるだろう。
僕たちは自然に対してもっと謙虚であるべきだと思う。
自然を守るにしても資源として活用するにしても自然への畏敬の念を忘れてはならないと思う。そして、その畏敬の念を抱く根拠は多面的であるほど良いと思う。
物理学とか化学とかをムズカシイと決めつけて耳目をシャットダウンさせてしまっては自然の精緻な仕組みを理解するチャンスを逸する。
豊かな心で科学を学んでもらいたい。
そして科学を教える教師自身がこのことをより深く理解してなければならないだろう。
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