中標津から釧路まで乗り合いバスに乗った。
退院後、初の外来診療を受けるためだ。自動車の運転は、もう問題なくできそうだったが、一応主治医に伺いを立ててからにしようと考えたのだ。
バスは、羅臼が始発で、釧路市内に入ってから4つの病院を巡回する。僕の行く釧路労災病院もその一つである。
病院へ通う人々を乗客の中心に据えた路線バスなのだ。鉄道が廃止されたことを補う意味もあるだろう。バスターミナルから病院の玄関前まで路線バスで行かれることは、一見、利用者にとって、素晴らしい待遇のように思えるだろう。
だが、このバスの運賃は往復で割り引かれて5040円かかる。
この金額は、例えば最低限の年金で生活しているような人々にとっては、どうなのだろう。決して安い金額ではないはずだ。
そして、もし、5000円分のガソリンがあったなら、僕のクルマでは釧路まで3往復できる。このことからも、せっかく便利な路線バスを作っても利用者が増えず、採算が合わないという結果を招くのが見て取れる。
朝8時過ぎ、中標津のバスターミナルを出発したバスは、ほぼ2時間かけて根釧原野を横切って釧路へ向かう。
窓の外は、牧草地。
川のある所は、河畔林。一面の新緑だ。
いつもは運転しながら横目で眺めるだけの景色を今日は、じっくりと観ることができた。 それにしても、事故の直前にはまだ、「早春の断片」が所々に残っていたはずだが、今日の牧草地や樹木は、すっかり初夏の装いに変貌している。
季節の流れが早すぎると思った。
もう少しゆっくりと、この甘やかな季節を味あわせてほしいのに。
昔のように標津線の鉄道があったなら、現在の運賃体系で2000円と少々になるはずだ。鉄道を廃止したのも、誤った方向へ急ぎ過ぎた結果ではないか。
先を急ぐ季節のことから、いつの間にか人間社会のしくみへと、考えが一巡りしていた。
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