2012年5月26日土曜日
エンレイソウが教えてくれる 日本のアセスメントのインチキ
昨夜は、知床財団の評議員会でウトロに宿泊した。
知床峠のゲートは、昨日まで朝9時の開門だったが、今日から8時に変わった。お陰で朝の知床峠を気持ち良く越えた。
昨日に続いて根室海峡は雲海の下になっていたが、今朝はウトロ側も厚い霧が低地に淀んでいた。
羅臼へ急いでいたが、誘惑に負け、少しの間峠の頂上で窓を開け、エンジンを停めた。
ノゴマ、ウグイス、アオジ、ツツドリの声に混じって、遠くでエゾムシクイやキビタキの声もした。
羅臼での会議がなかったら、クルマを乗り捨て、峠を歩いて下りただろう。朝の知床峠は、魅力的だ。
夕方、別海の自宅に戻った。家に入る道ばたのあちこちにオオバナノエンレイソウが咲いていた。
エンレイソウ属名は「Trillium」という。「3のユリ」という意味だそうだ。萼片、花弁、葉が3枚ずつ、花糸(「かし」おしべのこと)が6本、花柱の断面は三角形で柱頭は3つに分かれている。律儀なことに花粉さえも三角形をしてる。
とことん「3」の好きな植物である。
この花は大きな群落を作るが、花が咲くようになるまで15年くらいかかる。種子から発芽し、毎年少しずつ大きな葉を付けるようになっていき、15年目で、初めて花が咲き、その後、毎年花を付けるようになるそうだ。
つまり、エンレイソウの花が咲いている場所は、少なくとも15年間は掘り返されたりクルマで痛めつけられたりしていない「手つかず」の状態が続いたと証明されている。
また、エンレイソウ群落の年齢構成を調べるとその場所の環境変化を知ることができる。
たとえばエンレイソウの花はたくさん咲いているが、若齢のエンレイソウが少ないような土地は、その群落が将来失われる危険性があることを示している。
だが、世の中の環境アセスメント会社は、「現在の植生」の調査しかしないから、その群落の将来がどうなるかをアセスメントの対象にしない。アセスメントを発注する側もそこまでは求めていない。
日本のアセスメントは、このような事例ばかりで、抜け穴だらけなのである。
環境省も、瓦礫の広域処理に固執しているより、失われる身近な自然を保全するためにもっと真剣な姿勢を示してはどうなのだろう。
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