北見市の近郊、津別町にチミケップ湖という湖がある。
土砂崩れで川がせき止められて出来た湖で、周囲は深い森林に覆われている静かな場所だ。
毎週のようにカヌーを持って湖へ行き、湖上を漕ぎまわっていた。
あるとき、いつものように湖を周回していた。ちょうど、いつも漕ぎ出すキャンプ場の向かい側にさしかかった時、空から一羽の大きな鳥が急降下してきてカヌーの右舷側十メートルほど離れた場所にダイビングし、大きな魚をつかんで飛び去った。一瞬、何が起こったのか理解出来ず、呆然と見ていた。たぶん口を大きく開けていたかも知れない。
ミサゴだった。
ミサゴは主として魚を食べるタカで、海岸の高い崖などに生息していることが多い。チミケップには、大きな鯉がたくさんいるようだし、湖の岸に高い樹木も多いから、ミサゴにとっては暮らしやすい場所なのかも知れない。
それ以来、時々ミサゴと出会うようになったし、間近でダイビングを見せてくることも何度かあった。その場所を勝手に「ミサゴ湾」と名付け、カヌー仲間の友人たちもそう呼ぶようになった。
だからミサゴは、準絶滅危惧種に指定されているが、親しみを感じる鳥の一つだ。
英名ospray(オスプレイ)という。
あろうことか米軍は、この名前をV22という垂直離着陸機の愛称に使っている。戦争のための道具に、「ミサゴ」の名前を使われることにまず腹が立つ。
そして、このV22は開発段階で重大な事故を繰り返した「問題の飛行機」でもある。主翼全体を上に向けてほぼ垂直に離着陸する独自の構造を持つなど、一般的な飛行機には見られない構造が事故を結びついたと言われている。
もう一つの問題は騒音である。
垂直に近い角度で離陸する場合、機体の浮上は揚力によらずエンジンとプロペラに依存する割合が大きい。当然、騒音は大きなものになる。
「オスプレイ」はヘリコプターのような大きなプロペラを備えているから、騒音も大きいのだと思われる。
海兵隊向けにMV22という形式が量産されているが、これが沖縄の海兵隊に配備されることになるらしい。
「世界一危険」と言われている普天間に「世界一危険」な飛行機が配備される。
「沖縄県民の痛みを少しでも分かち合う『きづな』は、いったいどこへ行ったのだろう」
口を突いて出る言葉と、実際にやっていることが、これほど違う政治が、なぜ許される?
チミケップのミサゴが口をきいたら、
「こちらの『オスプレイ』を先に絶滅させろ」と言うに違いない。
2012年5月13日日曜日
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