レタスの王
むかし
あるところに
レタスの汁の好きな王があった
王は
レタスの汁を飲むことを国民に義務づけた
一日に三杯は飲むように、と
最低でも三杯
王の呪文は
こう繰り返す
人民は貧しかった
やせた土地を
貧弱な農具で耕し
コムギを植えても
コムギは育たず
ニンジンを植えても
ニンジンは育たず
細々と
ソバを作って
細く延ばして
食い延ばしていた
ソバ作る人はレタスを作れず
レタスの汁は
あまりにも高価だった
人民がレタスの汁を飲もうとしない
報告を受け、その王は
ついに癇癪を起こしてしまった
レタスを飲まぬ人間は
わが臣民にあらず
即刻追放とするべし と
レタスの汁を飲めない農民たち
一人、二人と国を捨てる
いつしか
王の周りに人はいなくなり
乾いた廃墟だけが広がっている
永遠の命を備えた王
孤独な日々は終わらない
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