2009年11月12日木曜日

バイオの黙示録

 アマゾンからのDMで諸星大二郎の「バイオの黙示録」というマンガの存在を知った。(「劇画」と書かないと叱られるだろうか?)ふだん、あまりマンガを読まない方だが、興味をもったので買ってしまった。

 「バイオの黙示録」は、DNA操作が進んだ未来世界の話。遺伝子操作で「優秀で有用な」農作物が効率的にどんどん生産されるようになってきた反面、人間の顔をして言葉を発するがその言葉に全く意味が込められていない鶏とか、魚とヒトの遺伝子が混ざり合って生まれた人魚、人間の姿をした雑草などの短い物語をオムニバス風にまとめられた内容である。

 一見荒唐無稽のように感じるが、実は現代の科学技術の持つ問題点を鋭く指摘していることに気づかされる。遺伝子操作は遺伝性の疾患の治療には効果的だし、そのための実験研究を止めるべきものではないと思うが、農産物の生産などへの適用は慎重であるべきだと思うのだ。
 実験室と生産現場では条件が違いすぎるからだ。最新の「技術」が災厄をもたらした最も典型的な例はセイヨウオオマルハナバチによる環境汚染だ。ニンゲンは、いつまでたっても、過去の多くの事例から教訓を学ぼうとせず、目先の利益が上がりさえすれば、なりふり構わず新しい技術に飛びついてきた。今もそれは変わっていないのだ。
 そして、その結果、取り返しのつかない災いを世界に広げ続けたのがこの2~300年だ。これは、今もなお懲りることなく、続いている。競争原理の信奉者、新自由主義者たちは、今も得々として「金儲けは善」と公言してはばからない。

 その結果、生物を取り巻く状況は諸星氏が描いて警告する方向に進まないとも限らない。

 DNAを細胞に植え付けるためには一種のウイルスを使う。もちろんインフルエンザのウイルスとは異なるものだ。だが、考えてみると、インフルエンザに感染するということは、一時的であるにせよ自分以外のDNAで汚染されることに他ならないのである。

 こう考えると、インフルエンザの流行も、ゾッとする現象に思えてくる。

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