2011年12月2日金曜日

算盤勘定でヒグマを見ないでほしい

まずは、新聞記事を2つ

 札幌市など全道各地でヒグマの出没が相次いだことで、高橋はるみ知事は、1日の定例道議会で、「生息数などの調査に着手し、捕獲の担い手の育成などに取り組む」と述べ、北海道全域でヒグマ保護管理計画を策定する方針を明らかにした。自民党・道民会議の田中芳憲氏の一般質問に答えた。
<12月2日読売新聞>

 本年度のヒグマの捕獲数は11月末までで749頭に上り、記録が残る1955年度以降では、62年度の868頭、64年度の794頭に次いで3番目に多くなった。これを受けて道は1日、道内の適正な生息数をはじめ、人や農作物の被害防止策を盛り込んだ「保護管理計画」を策定する方針を決めた。全道の生息数を来年度から2年程度かけて調べ、有識者会議の議論を経て2014年度までの策定を目指す。
 <北海道新聞12月2日朝刊掲載>

 保護管理計画は、あった方が良い。作ることに反対ではない。
 だが、草食獣で繁殖率が高く、エゾオオカミが絶滅した影響で個体数が制御できなくなったエゾシカの場合とヒグマのケースでは、事情が違うことを多くの人に知ってもらいたい。

 記事にあるとおり、本年度の捕獲数749頭は1955年以降では第3位で非常に多い。 だが、その原因について、もっと詳しく分析されなければならない。

 ヒグマは北海道の山林に「いる」のだから、元々山林だった場所を伐り開いて市街地を作った場合、それまでそこを行動圏としていたヒグマが市街地に現れても「市街地に出た」ということになる。
 元々山林だった場所に新たに畑を作っても、そこに現れるヒグマは、「畑に出てきたクマ」になってしまう。だから単純に数字だけを見て「クマが増えている」だから「個体数の調整が必要だ」と考えるべきではないと思う。

 「ヒトと共存していける適正な個体数」も、多角的な検討が必要だと思う。有識者会議には、歴史的視点を加味して、それを是非探り出してもらいたい。
 エゾシカと同様な「増えているから数を減らせ」という、きわめて乱暴な「管理計画」ならヒグマを絶滅させることになるだろう。

 詳しくはわからないが、昨日の高橋北海道知事の答弁を聞いていると、エゾシカによる農業被害が59億円、ヒグマによる被害額が○○○○万円などと、すぐに金の高に話を持って行く。そして、このまま見過ごすことはできない、となる。
金勘定の得意な知事らしい答弁だ。

 高橋知事は、目先の算盤勘定しかできず、自然環境なんて観光資源に過ぎないという思想の持ち主らしいから、そういう答弁がスラスラ出てくるのだろうが、このような事態に立ち至った原因が、人間の経済活動だけにあるという正しい反省に立って、物事を見渡すのが知事の職責ではないか。

 北海道電力の役員や元幹部から政治献金をガッチリ集め、公聴会ではヤラセを野放しにし、泊原発1・2号機の運転再開も容認しようとしている知事であればこそ、北海道で昔からひっそりと暮らしてきたヒグマのことなど、髪の毛の先ほども考えようとしないのだろう。

 「保護管理計画」は2014年までにまとめるのだそうだ。その時まで、この人に知事を続けて欲しくはないが、(続けさせるべきでもないし)もし、これが高橋知事の頭の中にあるような、一方的な「保護管理計画」であれば、僕はもう北海道で環境教育なんかやってられない。
 そんな「計画」には、職を賭して反対するつもりだ。
 (たいした「職」ではないけれど。)

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