2013年3月27日水曜日

定向進化は滅びへの道

 「定向進化説」はご存じでしょう?  生物の進化において、一度進化の方向が決まると、ある程度その方向への進化が続くように見える現象のことだ。  例えばウマの進化では、背の高さ数十cmで、足の指が四本ある先祖から、現在の大型で足指が一本だけの姿まで、いくつかの中間的な姿の種を経て一つの系列をなしている。このことから、ウマの進化には一定の方向があり、その方向への進化が続いたのだと見なす。ゾウの鼻、キリンの首なども代表的な例とされる。  これは、生活上有利な形質が、生存競争による淘汰の結果であると考えられているが、  しかし、進化の方向が必ずしも生存に有利な方向に向かっていないという例も挙げられている。  たとえば中生代の海で爆発的に分布を広げたアンモナイトもその一つだ。最初に現れた時は直線状の貝殻だったが、時代が進むにつれて先端の方から巻かれはじめ、ついに現代の巻き貝のような形になる。そしてそれに留まらず「巻き」がどんどん複雑化し、中生代末期には幾重にも巻きが重なって複雑な形のものが多数出現した。  その呼び方が正しいかどうかは別として、進化を語る本には、しばしば「異状巻き」などという名で出ている。  「定向進化説」が正しいかどうかは別として、この奇怪な(に見える)巻き方は、生存競争上どんな有利さがあるのか、はなはだ疑問に感じる。  さて、選挙制度改革をめぐる与党案のことを考えると、僕はいつでもこの「生存競争上無意味で奇怪な定向進化の果ての生き物」のことを思うのだ。  比例代表(180議席)を30議席削減した上で、残り150議席のうち中小政党への「優遇枠」として60議席を設ける、というものだ。  なぜこんな奇怪な制度が必要なのか?  答は簡単だ。自民党や公明とが政権を手放したくないからだろう。  選挙の制度などシンプルなほど良いに決まっている。極端に言えば、全議席を全国の比例代表で選んでも構わない。あるいは、候補者ごとでもいい。  現行の小選挙区比例代表の併用制だって十分に複雑で、奇怪なしくみだと言えるだろう。 それをさらに改悪した先で、ほんの一部の者が全体を支配する国にしていこうという野望が見える。  あのわかりにくいアメリカ大統領選挙のような仕組みを、指をくわえて眺めているような人間が、この与党案を考え出したに違いない。   だが、みな銘記すべきだ。  定向進化の果てに彼らはみな絶滅への道をたどった、ということを。

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