2009年2月23日月曜日

発掘記




  発掘前夜
 ストーブがおかしい。そう気づいたのは昨夜、帰宅してすぐのことだった。最初は、ストーブ自体のトラブルかと思った。点火ミスで燃焼室に灯油が溜まり過ぎることがよくあるのだ。だが、燃焼室に溜まった灯油を取り除いても改善されない。時々、中で爆発している。危険を感じて消火した。
 考えてみるとわがストーブはFF式というものだ。つまり、外気を取り入れて燃焼室に送り、排気も屋外に排出するという方式なのである。吹雪で雪に埋まった家の状態を考えてみれば、ストーブの吸排気口が雪に埋まっている可能性は高い。何しろ金曜日の午後から運転していなかったのだから。
 少し迷ったが部屋が冷え切っていたので、夜のうちに直そう、と思い立って外に出た。雪が、屋根の軒まである。スノーシューを履いた。午前1時を回っている。こんな真夜中にスノーシューを履いて屋根を歩き回ったら絶対に怪しまれる、などと考えたけど暖かい部屋で眠りたかった。懐中電灯の灯りを頼りに吸排気口を探した。だが、灯りに照らし出された吸排気口付近の状況を見て諦めた。分厚い雪と氷が覆い被さっている。おまけの足場も悪い。片手間にチョイチョイと掘り出すことは不可能だ。
 家に入ってベッドに潜り込んだ。寒かった。

  発掘当日
 夜の間は風が強かったが朝には静かになっていた。昨夜食べ残したおにぎりとパンで朝食を摂り、吸排気口の掘り出しに向かうことを決意した。(大袈裟だナ)軒先の雪山は屋根からの落雪も加わっていてかなり固く締まっているので動きが制限されるスノーシューを履かず、ツボ足でとりついた。
 吸排気口は、裏の家と我が家の隙間の狭い場所に取り付けられており、そこは、雪がもっとも分厚くなっている場所の一つだった。さほど高くないとは言え、地上から2メートル以上ある場所なので足場を固めながら慎重に近づいていく。まず、手前にある灯油タンクを掘り出す。タンク全体を掘り出すのは時間がかかりそうなので、とりあえずタンクの上面だけを露出させた。吸排気口はその先にあるはずだ。軒下の雪を慎重に取り除いていくとやがて黒いススの着いた雪が表れた。昨夜の「爆発」の跡だろう。
 実は、この部分、裏の家の玄関前になっていて足下の雪がえぐり取られて崖のようになっている。雪の上に腹ばいになり、慎重に身体を近づける。そして、とうとう手の届く距離に達した。吸気口、排気口に詰まった氷を取り除いて発掘作業は終わった。裏のお宅の玄関前に散らかした雪を片付けて、部屋に戻る。ストーブを点火すると、当たり前のように燃え始めた。 

0 件のコメント:

コメントを投稿