2012年6月21日木曜日

事故後はじめて教壇に立った

夏至。
台風崩れの低気圧の影響で朝から雨が降り続き、「夏至」を実感できない天候だったのは残念なことだ。
 ノルウェーの友人が以前、
 「ノルウェーでは、夏至の夜は、焚き火を囲み、大勢が一晩中踊って過ごす『ミッドサマーフェスティバル』をするんだよ」と話してくれたことを思い出す。いつか行ってみたい。

 今日は、事故後初めて羅臼高校の教壇に立った。
 今週の月曜日から出勤していたが、高校の時間割係の配慮で、今日まで授業を入れずにいてくれたためだ。
 「知床概論Ⅲ」という選択授業。
 授業と言っても事故前に作成した中間考査の答案を病院で採点していたので、返却するだけのことだが。
 足を引きずり気味に歩き、左腕を吊った「痛々しい」姿に生徒たちは、まず驚いたようだ。
 この格好で教壇に立って、事故について何も触れないというのもおかしな話なので、授業の冒頭で、簡単に経緯と怪我の状態を説明した。
 次に答案返却が遅れたことを詫び、解答と問題の解説、採点ミスのチェックと進んで時間通りに終わった。

 教卓を片付け、職員室に戻ろうとした時、二人の男の子が近寄ってきて、書類の入った僕のバッグを持って行くと言う。
 重いバッグではないし、何の苦労もなく自分で運べるのだが、その気持ちが嬉しかった。

 折しも4時間目の終わり。校内の小さな売店にパンや飲み物を買うため、生徒達が先を争って急ぐ時間だった。
 「売店に急いで行かなきゃならないんだろう。オレは大丈夫だよ」と僕。
 「なんも、どうせ早く行っても混んでるから、俺たちはゆっくりでいいんだ」
 相手に負担をかけまいという彼らの配慮が、言葉の裏に漲っている。
 かすかに鼻の奥がツーンとしてきた。
 「悪いな」と言ってバッグを渡す。

 二人ともいわゆる「よい子」ではない。
 どちらかと言えばヤンチャな生徒たちだ。
 日頃の授業でも、私語が多かったりして、僕からもよく注意を与えていた生徒たちだ。 そんな子たちだからこそ、自分の考えたことを率直に行動できるのかも知れない。

 こんな良い生徒と授業をしているのだとあらためて思った。
 一日も早く全快し、彼らに全力で色々なことを伝えなければならない。そう思わせてくれた一瞬だった。

2 件のコメント:

  1. 弱ってみると人の温かさがよく分かりますね。
    逆に生徒たちも、先生が無事で本当によかったと感じているのでは。

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  2. berryowlさん:
    人の温かさ、本当に身にしみます。
    生徒達の良さも今まで以上に見えて来たのでしょうか。

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