2009年9月28日月曜日

キリギシ山

9月27日(日)

 崕(キリギシ)山(1066m) が見たくなって、富良野を通って帰ってきた。
 それほど高い山ではないが、周囲の土を削り落とされた石灰岩がノコギリの歯のように切り立っていて、独特の山容をもっている。
 石灰岩の土壌だから塩基性が強く、固有種や高山植物が豊富に見られ、爆発的に登山者が押しかけた。また、自家用車で簡単にアプローチできることから大規模な盗掘が行われた歴史を持つ。
 いわば、自然への畏敬の念などハコベの花粉ほども持ち合わせていない者たちによって、好き勝手に蹂躙された悲しい歴史をもつ山である。
 何百年も何千年もニンゲンによって荒らされることの無かったこの山は、わずか十数年の間に全く別種のような無知で強欲なニンゲンの手でボロボロにされたのだ。

 いまは、良心的な地元の人々の手で辛くも守られているが、かつてのような自然が回復するまで、いったいどれほどの時がかかるのだろう。もしも知床半島が、この山のように大都市に近い「便利な」位置にあったとしたら、やはりガサツで利己的な欲にまみれたニンゲンたちの手でズタズタにされていたに違いない。

では、崕(キリギシ)山は、知床に反映されているのか?
 とても反映されているとは思えない。山は何も言わないが、何も言わないがゆえに訴えかけている。崕(キリギシ)山の声に僕たちは、もっと耳を傾けるべきではないだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿