2011年9月25日日曜日

東京の地下鉄で知床の海岸を思う。

9月24日(土)
 羅臼町の「ふるさと少年探検隊」がベースキャンプにするモイルス湾の直前に、巨大な岩が海岸を埋め尽くしている場所がある。
 地質のことはよくわからないが、古い海底噴火活動の溶岩が隆起して崖となり、割れて崩れ落ちた岩が積み重なったもののようだ。住宅一件分もあるような岩が、昨日転がり落ちてきたばかりのようにゴロゴロと積み上がっている。
 岬へ行く時は、底を突破するしかない。
 這いのぼる、隙間をくぐり抜ける、飛び降りるなどあらゆる方法で通過する。巨利にすればさほどの長さではない。せいぜい数百メートルくらいだろう。だが、そこの通過には時間がかかる。
 時間が掛かるもう一つの理由は、ルートを見つけにくいことにもよる。僕も昨年、クマの追い払いのために単独で先行したとき、ルートを誤り10メートルくらいの高さの断崖で立ち往生したことがあった。

 網の目のように張り巡らされた東京の地下鉄で、移動しているとき、ふとこの経験を思い出した。
 地下鉄の駅やコンコースも構造はよく似ていると思う。
 ただ、地下鉄の方は、案内の標識が「これでもか」と言わんばかりに案内標識がどこにでもある。インターネットで調べると、安いルート、早く着くルート、乗り換えの少ないルートなど細々と出ている。乗り場や、乗り換える時はどの辺の車両に乗ればよいかまで書かれている。親切で便利なものだ。

 ふと考えてみた。
 これらの情報が突然、一切合切消えてしまったらどうなるだろう。
 試行錯誤を繰り返し、わずか数百メートル進むのに何十分もかかるに違いない。
そんな構造は知床半島の海岸と大きな違いはないだろう。
 違っているのは、知床の海岸には、標識の代わりにあちこちにヒグマの糞があることくらいだ。

 都市は便利で快適だ。
では、知床の難コースにももっと標識を設置すれば良いだろうか。
 「この先モイルス湾」とか、「こちら相泊」とかのように。

 いや、そんなものは要らない。 

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