2012年8月30日木曜日

又三郎も怒っているに違いない

 夜、根室半島に風力発電のための大型風車を建設したいという会社と野鳥の会との話し合いに出席した。  根室半島の発電用風車に関する件で話し合ったのは、これで4社目だろうか。  風力発電の事業者にとって、根室半島はよほど魅力的な条件を備えているらしい。  計画はまだ予備調査の段階だったがその建設予定地点は、すべてシマフクロウやオオワシ、オジロワシ、タンチョウなどの稀少鳥類の行動圏の中に含まれていて、計画を検討する必要もなかった。  誠実に建設の可否を問い合わせてくれた風力発電事業者には気の毒なのだが、全く話し合いの余地がなく、計画の撤回を勧めることしかできなかった。  昨年の福島第一原発事故を受けて、急速に広がった「脱原発」の機運に乗って、風力発電事業者は、にわかに風車の建設計画を活発化させた。もちろんその背景には、政府のエネルギー政策で再生可能エネルギー買い取りを拡大するという方針がある。  発電事業者は、競って風況の良い場所を確保し、風車を建てようとするのは当然の動きである。  だが、それはその土地で暮らす鳥類の生存への大きな脅威となるのは、これまでのバードストライクの事例から明らかだ。  カワウソや九州のツキノワグマの絶滅が「公認」された直後に、こんな話し合いがもたれること自体、人間の側が本当は全然反省していない何よりの証拠だろう。  とは言え、風力発電用風車の立地の問題を除けば、原子力発電への批判や再生可能エネルギーの振興などで事業者側との一致点は多い。「鳥の問題」以外の話題では意気投合する場面も少なくない。  そんな雑談を交わしているとき、風車の形状と性能についての話題が出た。  そこで、直径100メートル近い風車が、垂直に立って、勢いよく回転する現在の風車とは全く別の、環境へのインパクトが少なく効率の良い形状やシステムの風車を使うことができないのかを尋ねてみた。 今夜来ていた風力発電会社の代表は技術畑の出身者のようだったが、即座に返ってきた答えは意外なものだった。  「現状で、電力会社が買い取るのは、三枚羽根の大型の風車によって起こした電気だけなんです」と。 発電用風車の形状は、縦型のものやツインロータと呼ばれる小型のプロペラを二つ横に並べたものなどいくつかの種類がある。それらの中で、もっとも出力を大きくできるのはおなじみの「大型三枚羽根」であることは理解していた。  しかし、電力会社の「買い取り基準」や法律上の補助金の有無までが「大型三枚羽根」の風車のみを国中にはびこらせる後押しをしていたとは。  日本の行政は、自然環境を守っていこうというという真剣さを全く持ち合わせていないことを思い知らされた。  あまたの公害問題はどう反省されているのか。  黙って絶滅していった野生生物に対してどう償おうと考えているのか。  そして、気づいた(本当はわかっていたのだが)自国の自然環境を尊重しようとせぬ政府が自国民の生命を真剣に守ろうとするわけがない。  ははーん。  思い当たることがたくさんある。

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