2012年9月21日金曜日

旅の記  その9

ボレツワビエツ ~ ブラツロフ  城を朝、出発して陶器工場を三つ見て回った。  良質の粘土が採れる地域であるため、昔から陶器で有名な所である。それも、茶碗や皿など日常的に使う実用的なものが多く、愛好者の間では有名であるとのことだ。  窯元というか工場ごとにデザインや模様が違っていて面白い。基本的には手描きで、一つのパターンを繰り返し使って緻密で細かな模様を付けたものが多い。  たとえばペルシャ風の建物の壁などによく見られるパターンに似たものが多く、ヨーロッパの中でも東洋に近いからなのだろうかと勝手に解釈してみた。  三つの工場を一台のタクシーで回ったのだが年配のドライバーは、全く英語が話せず、コミュニケーションに苦労した。  しかし、とてもいい人らしく、いくつかの工場の製品をそこの販売店で見ている間、嫌な顔ひとつしないで待っていてくれた。  そればかりでなく、購入した陶器を郵便局から発送する長い時間も待っていてくれたのだが、すべてを終えて郵便局を出て、 「駅へ」と伝えた後で、郵便局が駅から100メートルも離れていなかったことに気づいた僕たちに温かい笑いを送ってくれた。  列車を待つ間、町を歩いた。  小さな町は北海道の田舎町とよく似た雰囲気で、済んでいる人々は互いに皆が知り合いのようだった。  列車で、昨日、クラコフからの列車から乗り換えたブロツラフまで戻ると、ベアータさんがホームまで迎えに出てきてくれていた。彼女とは今回の結婚式で初めて会った。大学で日本語を教えているという。九州大学に留学していた経歴を持っていて流ちょうな日本語を操る。  非常に親切名人で、知り合って間もない僕たちを自宅に泊めて下さるばかりでなく、ブロツラフの町の見所を詳しく案内してくれた。  ブロツラフは、ポーランドの南西部に位置している。チェコと国境に近い町で、国と国の間の駆け引きでドイツ領になったりチェコ領になったりオーストリア領だったりと、大国のせめぎ合いに翻弄された歴史をもっているという。  最近になってブラツロフの郷土史に非常に強い興味を感じているというベアータさんにそのようなことを教えてもらった。  そこで暮らす人々も移住を強制されたりしたこともあったという。  そんな歴史を背負っている土地ももあるのだ。いや、日本にいたのでは、わからないことだろうが、世界中のほとんどの国は、そのような歴史を背負っているのではないだろうか。  そう考えてくると領土というものが非常に流動的なもので、まなじりを釣り上げて「固有の領土」などという主張がバカらしく思われる。  どこの国に属してようと、そこで生まれ育った人々にとっては自分の「郷土」があるばかりなのではないだろうか。  大聖堂、ギリシア正教、プロテスタント、カトリック、様々な教会を見て回り、14世紀から続いているという工場のビールを飲んで、ベアータさんの家に行った。  家では、お母さんがポーランドの家庭料理を作って待っていてくれて大歓迎を受けた。

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