2009年7月18日土曜日

ビジターセンターであったこと

 以前、羅臼ビジターセンターの人手が足りなくて、ボランティアとして受付業務を手伝ったことがあった。その日は、雨降りで、屋外での活動を避けてVC(ビジターセンター)を訪れる人は多かった。
 閉館間際の夕方、一大の大型バスが駐車場に入ってきて40人近い観光客がやって来た。ほとんどが中高年で、服装から登山を目的に来た団体であることは一目瞭然だった。どこの山へ登ってきたのか全員疲労困憊していてものを言う気力もないように見えた。バスガイドの中年の女性の声だけが金属的でヤケに目立っていた。彼女はその金属的な擦過音に似た声を張り上げ、
「トイレを済ませたらすぐバスに乗ってさーい」と叫んでいた。乗客は、抜け殻のようになって次々とトイレに入り、出てくるとまっすぐバスに向かっていた。一言も声を発する人はおらず、VC内の展示に目もくれなかった。
 驚いたことにバスガイドさんは、受付にいた僕たちに対して、一言の挨拶もせず礼も言わず、目を合わせようともしなかった。
 総滞在時間五分強。あの集団はたんだったのだ!というザラついた疑問だけが残された。VCは、確かに公共施設だから誰がどのように利用してもいいのだが、知床半島の自然環境やリアルタイムの情報を来訪者に伝えることを目的としている。また、そこで働いている人もたくさんいるのだ。自ずから節度というものがあってしかるべきではないだろうか。その施設で働いている人々への礼儀など、マナー以前の問題だ。僕は、そこに、国立公園を利用している自分たちは「客」であり、様々なサービスを受けるのは当然だ、という傲慢な気持ちを垣間見たように思う。
 また、ツアーのお客たちの疲れ果てた様子から、旅や登山を楽しむこととは無縁の苦行を強いられているようなある種の哀れさを感じ取った。今回のトムラウシの遭難事故もひょっとしたらこのような感じのツアーだったのだろうかとふと思った。

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