2012年10月10日水曜日

建築はアートでなければ

 ウィーンの街に「Hundertwasser Kunstbauwerke」という看板があり、写真のような建物が建っている。看板の意味は「フンデルトヴァッサーのアートビルディング」とでも訳すのだろうか。  オーストリアの画家で建築家のフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーがウィーンに建築した公共住宅である。  オーストリアの人気テレビ番組「願いをかなえて」(1972年)にフンデルトヴァッサーが出演した際、彼は自分の夢を「植物と共に生きる家を作ること」と語った。家の模型を作り、人々に「植物と共に生きてこそ人間は、よりよい生活を送ることができる」と訴えた。  それを受けて当時のウィーン市長が、1977年、フンデルトヴァッサーに自然と共生する公共住宅の建設を依頼した。  しかし、フンデルトヴァッサーはイメージした建物は、従来の建築理論と相容れない常識外れのものであったが理解を示す建築家が現れ、1983年に建設が始まり、1986年に完成した。  専門家の中には悪趣味だという意見もあったが、入居希望者が殺到し、大評判となったという。 完成から現在まで、訪れた人を楽しませるカラフルでリズミカルな外観、至る所に植えられた植物は成長を続けている。フンデルトヴァッサーの思いが詰まった独創的な住宅である。  当時、一緒に作業した建築家のペーター・ペリカンは「確かに彼は建築家ではなかったが、哲学者だった。自分の造りたい家のビジョンをしっかり持っていた。例えば家を建てると地面がなくなる。その代わりに屋上に地面を作り、植物を植える。これが重要だ」と語っているという。  このようなリズミカルで有機的な曲面からなる建造物は、スペインのガウディの建物が有名だが、フンデルトヴァッサーさんのこの建物も、同じ系列に属するものだろうか。  日本だったならば、建築基準法がどうだとか、景観上の問題が・・・などと言い出す人がいて、絶対に建てられないかも知れない。  あるいは、奇をてらって周辺の景観を無視して独善的な「変わった建物」になるかも知れない。  今回訪れたウィーンの「Hundertwasser Kunstbauwerke」は、派手な色使いで奇妙な外観でありながら不思議に周囲の街並みに溶け込んでいた。  さすがは「芸術の都ウィーン」だけのことはあるなあ、と感心したものである。 

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