2012年10月25日木曜日

山を見に行く

 本州を覆う高気圧の勢力圏に入っていて朝から晴天だった。  日陰に霜が残ってはいたが、気温はそれほど下がっていないようで、日なたでは、暖かく感じられるほどだった。  朝、出勤前にアファン(犬)を連れて、散歩した。  草地からササの原野を通り湿地を通って林を抜け、馬の放牧地に出て家に戻ってきた。  道などあるはずがないのだが、細く踏み痕がついていて、多くの動物が利用しているのがわかる。  アファン自身に行きたい方向を選ばせながら歩いた。彼女には獣道がよく見えるようで、湿地でも薮でも、最も歩きやすいルートをとって先導してくれた。 「蛇の道はヘビ」という言葉があるが、「獣道はケモノ」ということだろうか。  生き物の能力は、それぞれでニンゲンが何でもかんでも優れているという訳ではない。わかっていたことだがあらためて思い知らされ嬉しくなった。  昼間、「野外活動」の授業だった。  抜けるような青空に雪をまぶされたような羅臼岳が美しかったので、予定を変更して知床峠まで行ってきた。  気持ちがくさくさした時は山を見に行くに限る。登ればもっと良いのだが。  羅臼岳の山頂は一度雪に覆われたが、先日の暖気で一旦融け、二度目の冠雪である。  目測で海抜900メートル付近まで、雪が来ている様子だった。  9月末、バイカル湖の上空を飛行機で飛んだ時、バルグジン山脈の頂が雪に覆われているのが見えた。    冬は、高い空からやって来るのだなあ、などと考えながら峠を下った。  「高き空よりわれは来たれり」というバッハのコラールがあった。 原題は「Vom Himmel hoch, da kommich her」バッハ作曲 オルガンコラール BWV 701 であった。  高い空から冬とともに、人類のおごりと勝手な振る舞いを正す、強い力が来ないかしら、とちらりと思った。   小さなことで気分が揺れる自分が恥ずかしく思われた。

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