2013年2月5日火曜日

華やかなJRの陰で・・・・東の果てへの旅

札幌からの帰路である。やや吹雪気味でほとんどの列車が定刻よりおくれて到着していた。  定時発車した「スーパーおおぞら7号」もすぐに遅れ始めた。  いつも感じることだが、ヒトであふれた札幌駅を発った特急列車が帯広に着くと車内の半分くらいの乗客は降りる。代わって乗ってくる人は、ほんのわずか。  すっかりガランとなった特急から残りの人々が降りるのは終点の釧路駅だ。  そこから先には花咲線と釧網線という二本のローカル線が伸びている。釧路駅ではそれぞれに接続する普通列車が待っていてくれる。 だが、特急から乗り換える人は極端に少ない。そしてこの先では、降車する人ばかりになる。「引き算の乗客数」が続く。  小柄な車体にディーゼルエンジンを2基搭載したキハ54。  暗い車内照明、スプリングがへたったシート、と素朴な雰囲気がいかにも設備投資を節約したローカル線の車両という雰囲気だ。  走り出すとその感はさらに強まる。  容赦なく車内に伝わってくるエンジン音や走行音。そして軟弱な路盤の上に細いレールが敷かれているための大きな揺れ。まるで時化の海を走る漁船のようだ。  かつての国鉄が多額の赤字で苦しんでいた頃、鉄道運賃の値上げに対して首都圏のサラリーマンが大まじめな顔でTVのインタビューに応えていた。 「ローカル線の赤字の分までわれわれが払う運賃に上乗せされるのではたまりません」と。  はるか昔の話だが、この言葉は今でも僕の耳に鮮やかに残っている。  それは一つの正「しい考え方」で、その「正しい考え」に基づいて国鉄を5つに分割したうえでローカル線の大半をバッサリ切り捨て黒字に転換させたと胸を張っている。  そのために老人は病院通いの足を奪われ、高校生は高校への通学の足を失った。過疎化に拍車がかかり、都会と地方の格差は広がった。住む人がまったくいなくなった集落さえある。  競争原理で競い合って敗れたのだから仕方がないのか。敗者はいつでも不便で垢抜けない劣悪な環境で耐えなければならないのか。  そんな格差を広げる地方公共交通の切り捨てに、地方を守る立場に立つべき知事までが手を貸す。これが北海道の現実だ。新幹線を札幌まで引っ張ってくることに血眼になっている知事や「財界」人に高額な運賃と不便なダイヤ、快適とは言いかねるローカル線で呻吟する者の声など届くわけもない。  その一方で、「一つになろうニッポン」などと空虚な標語を叫んでみせることだけは忘れない。  「一つになる」のなら、せめてローカル線の路盤整備くらいもっとしっかりやってみせてほしい。いつ暗闇から飛び出してくるか知れないエゾシカに神経をすり減らして前方に目を懲らす運転士の苦労も軽くしてみせるべきではないか。  「苦労を分かち合っている」と大威張りで叫ぶのであれば。 

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