2009年5月30日土曜日

紋別市沖海鳥調査






 朝、6時集合だったから前日、ウトロでの会議プラス懇親会の予定をこなしてから行くのは、ちょっと抵抗を感じた。

 しかし、宴会を一次会で切り上げ、ホテルの部屋に戻ってベッドに入ったは9時。午前2時30分にセットしたアラームで目覚め(本当はその前に目が覚めた)3時少し前にホテルを出る。まだ暗かったが少し走るうちに徐々に明るくなってきた。
 この朝の空気に中を走っていると、
「よし、紋別まで走るぞ」という気持ちが高まってくる。夜明けは気持ちが良い。特に、今頃の季節は。
 朝陽は北浜の海岸を走っているとき、水平線から顔を出した。さらに走り続け、紋別市内に入ったのは5時。予想以上に早く着いた。コンビニを探して朝食とお昼用の予備食を買い、集合場所のガリンコステーションへ。荷物と服装を整えて待った。
 能取湖から常呂付近までは晴天だったのだが、浜佐呂間を過ぎた辺りから濃い霧がたちこめいて、紋別市内も霧の中。海も当然霧。「霧の魔女の呪い」はまだ続いているのか、というイヤ感じを覚えた。

 やがて20名あまりの人々が集まってきて、ガリンコ号は7時に出航した。実は、この船に乗るのは初めてだった。流氷観光で有名なのだが、紋別まではなかなか遠く、冬にここまで来る、というのはちょっと気合いが要る。そんなわけで、気になる存在ではあったけれど、乗る機会がなかった。思いがけない形で乗船させてもらえるとは、うれしい限りだ。
 参加者は「調査する人」と「単にバードウォッチングする人」に分かれているらしかった。「調査の人」はさらに二班に分けられる。右舷の班と左舷の班だ。ガリンコ号は幅が広く、調査ブリッジの両側のデッキで観察することになるため、両舷のコミュニケーションがほとんどとれない。したがって、完全に二つの班に分かれることが必要だ。海鳥の識別にあまり自信のない僕は記録係を志願した。
 船は、定刻に出航したが、霧が深く、紋別港外に出たことすら船長さんに教えてもらって初めてわかったほどだ。
 港内の堤防にオジロワシが一羽とまっていた。さっそく記録。

 航路は次の通りだ。海岸線から1マイルの距離をたもって、コムケ湖の湖口まで進む。そこで左へ90度進路を変えて海岸線から直角に8マイル進む。その地点から反転し、紋別港へ直接戻ってくるのである。つまり直角三角形の縁を進むことになる。
 速力は10ノット。ガリンコ号は、舳先に巨大な砕氷用のドリルを二本も抱えていて水の抵抗を強く受けそうな船形でありながら意外に速い。昔、北極海で乗ったロシアの動力付き艀(はしけ)なんかよりはるかに軽快に素早く動く。日本の技術力はこんな所にもいかんなく発揮されている、と感心した。

 コムケ湖湖口から沖に向かい始めて2マイルくらい進んだだろうか。突然、霧が晴れてきた。そして、その時に合わせたように行く手におびただしい数の鳥群れが現れた。根室海峡でもなじみ深いハシボソミズナギドリだ。この時の群れは推定で1万超。周辺にも同じような群れがいるだろうからこの海域だけで数万のハシボソミズナギドリがいることになる。目の前にいるその大群は、さかんに餌を採っている。想像を絶する量のオキアミがいるのだろう。中には、腹がはち切れそうにふくらみ、満足に飛び立てないような個体もいる。

 こんな海にはミンククジラがきていることが多いんだよなあ、と考えていると400mくらい遠くで白い波がピカリと光った。瞬間であったが、クジラがダイビングしたときの波だ、と感じた。隣にいた識別担当のCさんも同じように感じたらしい。この時点で、僕たち二人はミンククジラの存在を確信した。
 案の定その数分後、根室海峡で見慣れた鍵型の小さな背びれをしたミンククジラが数頭現れたではないか。

 実に久々に間近で見るクジラの姿だった。ガリンコ号はしばらくそこに留まり、乗客は皆、クジラの姿を堪能できた。

 人間とはゲンキンなものだ。今日の参加をあれほど逡巡してことなどすっかり忘れて、クホクしながら船を下りる僕自身を見ていて、つくづくそう考えた。

 ◎確認した種(個人用野張写し)◎
オオセグロカモメ、ウミネコ、ウトウ、ケイマフリ、ウミウ、ヒメウ、アビ、ハシジロアビ、ウミスズメsp、アカエリヒレアシシギ、フルマカモメ(褐色型、白色型)、ウミアイサ、ハシボソミズナギドリ、オジロワシ、トビ、キセキレイ、ハシブトガラス

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