2009年6月21日日曜日

 父は、今年誕生日が来れば89歳になる。大正の人だ。徴兵制度のまっただ中で青春を過ごし、帝国陸軍軍人だったこともある。一兵士だったのだが。

 幸いなことに年齢の割には健康で、しっかりとしている。たまに、携帯電話でメールをよこしたりもする。国語の教師だったから言葉や文字にはうるさく、今でも僕の言葉遣いや漢字の誤りを注意されることがある。学生時代に実家に送った仕送りを要請する手紙(その頃は手書きだった)の誤字をすべて赤ペンで指摘されたのには参った。 
まあ、そのお陰で漢字は人並みに正しく覚えている方かも知れない。だから今は感謝しているが。

 そんな父にパソコンを持たせようと画策しているのだがなかなか踏み出せない様子だ。いわく、
「いったいどういう仕組みでこのように正確に作動するのだろう。それがわからないと使う気になれない」と。
 一事が万事こうなのである。携帯電話がどこにいても相手につながることを不思議がる。テレビが映像を映し出すことも不思議がる。ただ、不思議がるだけでこちらが必死で説明してもちっとも納得してくれない。あれはただ、不思議がっているポーズをとっているのかも知れず、端から理解しようという気は無いらしい。

 先日、硬膜下血腫の手術を受けた。術後は順調に回復している。まだまだ長生きしてほしいものだ。この先、もっともっと不思議なモノや道具が現れることだろう。そして日本の政治や社会ももっと奇妙奇天烈な現象が起きるに違いない。その時は、できれば、ポーズではなく、本気で不思議がったり怒ったりしてもらいたい。

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