「劔岳(つるぎだけ) 点の記」を観てきた。
新田次郎昨の原作は読んでいた。
明治時代、日本全土の地形図完成させる過程で、最後の空白地域の一つだった立山地方の測量の最後の三角点を当時未踏だった劔岳山頂に設置する時の物語である。
劔岳は氷河に削り取られた氷食尖峰で、北から東に向かって、大窓・小窓・三ノ窓と呼ばれる懸垂氷食谷があり、登頂を阻むような岩壁が立ちはだかっている。さらに、日本海を渡ってくる季節風と太平洋から風が複雑な地形にぶつかる厳しい気象条件が人を拒み続けてきた。
日本山岳会との初登頂争い、陸軍参謀本部と測量をする現場技術者との軋轢、山岳信仰や民俗文化との葛藤などなど「ドラマ」になる要素はタップリとあるのだが、何よりも「地図を作りたい」という測量官・柴崎芳太郎の堅い意志と地元の案内人である宇治長次郎(うじ ちょうじろう、1872~1945)の人間としての対等な信頼関係など感動的な所が随所にあった。
また、「八甲田山」など数々の映画でカメラマンを務めた木村大作さんの初監督作品であり、ちょっとエラそうに言わせていただけば、カメラの使い方に感心した。全体に抑制の効いたカメラワークが多く、淡々と展開していくストーリーは、まるで映画全体が山登りの行程であるかのように感じられた。
ジワリとした映画。もう一度観たい。
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