2009年1月16日金曜日

塩酸フェニレフリン

 塩酸フェニレフリン  というのは、散瞳剤つまり目の瞳孔を広げる薬だ。
 視力の衰えがはげしい。2.0あったものがいつの頃からか0.5~0.7になってしまった。 星が二重に見えるようにもなった。
 自分の眼に絶対的な自信を持っていただけに衝撃だった。数字の並んだ成績一覧表を読み違えるなど職務上のトラブルも増えた。周囲に迷惑をかけることがあってはならないから眼鏡をかけようかな、と弱気になった。 数年前から思い始めた。
 それにしても、視力低下の原因が気になった。様々な病気も考えられるの眼科を受診してから眼鏡を誂えた方が良いと考えた。そうなるとさあ大変。半径100km以内に眼科は一つしかなく、受付は9時から11時までの三時間。それに向かって人々がドッと押し寄せる。通院時間と待ち時間、診察・検査の時間合計で4時間30分。そのうち検査と診察に要する時間は、15分くらい。5.6パーセントだ。なかなか受診の機会は巡ってこなかった。
 しかし、年があらたまり、年頭に「目医者に行く」という決意をキッパリとした。で、本日の受診とわけである。

 器械を使ったいくつかの検査に続いて散瞳剤の点眼を受け、医師による診察となった。痛くも痒くもないが、「めいっぱい」に開いた瞳孔をライトの灯りで照らし、眼球内部をくまなく見てくれたことは、心底ありがたかった。結果「異常はありません」と告げられた時は嬉しかった。60年近く酷使に耐えた自分の眼球にまだ異常は無く、単にピントなどを調整する筋力が弱まったことよる視力低下だと診断された。
 「ウーン。よく頑張ってきたな、俺の眼の筋肉たちよ」としみじみ思った。これからはもっと労ってゆっくり休ませ、チカラを回復させてやりたい、と考えながら診察室を出た。 しかし、料金を支払い、病院を一歩出たところで、目がくらんだ。瞳孔が全開になっているので冬至を過ぎ、「光の春」に向かっている太陽光がガガガッと眼球に飛び込んで来たのだ。眼球の中が光であふれた。不快ではないけれど、何も見ることができなくなってしまった。瞳孔の開閉を行う虹彩の反射がいかにありがたいものなのか、よくわかった。サングラスのありがたみも身に染みた。
  なんだかあちこちに感謝の念が湧いた一日であった。

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