2009年4月6日月曜日

霧の森と月光





  月光に照らされた森に行った。
 満月までは、まだ何日かあるが、全く光のない森を照らすのに月の光は十分に明るく、青い光の中で、樹木たちは、黒い影となって静かに立っていた。静かに佇んでいるように見えた。しかし、そこでは、昼間とは別のはげしい生命活動が行われていたように感じられた。

 いま、樹木たちは、凍った地面から、わずかに解けだした水分を、かき集めるようにして吸い上げ、はるか高みにある樹冠部まで押し上げる活動の真っ最中なのだろう。競い合って水を吸い上げているのだろう。まだ眠っているように見える森の樹木たちは、生命力の全てをかけて、その仕事に打ち込んでいるに違いない。
 水を押し送る根端の細胞の活動が、数値では感知できない律動となって、晩冬の夜の森をふるわせていたのかも知れない。

  突然に霧が出てきた晩の出来事である。

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