2009年4月4日土曜日

うれしい知らせ

 一昨日、嬉しい電話があった。8年前に卒業させた生徒から結婚式に出席してほしい、と言ってきたのだ。しかも、結婚相手は、高校の時から交際していた同期生。彼も1年生の時に僕が担任していた。
 彼女は、真面目な生徒だった。北海道新聞のコラムに彼女についてこんなエピソードを紹介したことがあった。

 その時、A子、E子と私の三人は、フライドポテトの材料を探して、町に出てきた。学校祭のHR企画で喫茶店をやることになっていたのだ。スーパーの冷凍食品の並んだ棚を見て、E子とA子は動かなくなってしまった。フライドポテトは、予想していた値段よりはるかに高かったからだ。もう、模擬店の売値を変更はできない。赤字覚悟で売るか、一人分の量を極端に減らすか。皆、見通しの甘さを後悔した。
 「私、ちょっと店長に聞いてくる。」その時、E子が言い出した。
 E子はそのスーパーに隣接するMバーガーでアルバイトをしていた。そこには、当然のことながらフライドポテトがある。その材料を分けてもらおう、と考たらしい。
「調理した製品ならいくらでも売ってくれるだろうけど、材料を分けてくれるとは思えないなあ。」と私。
「とにかく行って、聞いてくる。」と彼女。
後姿を見送るしかなかった。

 しばらくして、
「あのね、先生!必要なだけ売ってくれるって。コッソリだけどね。それに、店長の好意で一袋寄付してくれるんだって。」と、うれしそうに戻ってきた。大手の有名なチェーン店である。私は耳を疑った。

  E子は牧場の娘だ。働き者で家業を手伝ってトラクターも運転する。体を動かすことをいとわない明るい性格。入学してまもなく、この店でアルバイトを始め、ずっと続けてきた。今も続けている。
 仕事が長続きせず、アルバイト先でさえ次々に変えていく飽きっぽい者も少なくない。そんな中で、よくがんばってるな、という印象を持っていた。しかし、ここまで店から信頼されているとは。彼女の人柄をあらためて見直した。
 そして、この経験は彼女に、誠実に働き続ければ、社会が自分を評価してくれる、ということを実感させたことだろう。もちろん、クラスの他の生徒にも。生きた教訓になっただろうことは間違いない。
 学校祭当日、わがクラスのフライドポテトの味は全校の評判を呼んだ。会う人ごとに、皆が私に訊いたのだ。
「どうして3Aのフライドポテトだけがあんなに美味しいの?」と。
 嬉しさをかみ殺し、本当の事を言いたい気持ちをグッとガマンして、とぼけた。
「なんでかねぇ?生徒たちがココロを込めて作ったからかもしれないねぇ」

0 件のコメント:

コメントを投稿