2012年4月13日金曜日

海明け 流氷百話 22/100

流氷の季節も終わる。
 海岸には、もう流氷の「本隊」はない。
 南風の日が増え、北へ吹き流されてしまった。
 海岸には、座礁して動けなくなった氷が、ポツンと取り残され、日ごとに小さくなって消える時を静かに待っている。
 無生物の氷塊だが、そこに寂寥感や無常感を覚えるのは、ひとつの「終末」の姿であり、滅びる姿が見えるからだろうか。
氷が滅びる海は、春の明るさに満ちている。。

 流氷原が完全に海を閉ざす網走側のオホーツク海では、流氷が去り、漁を始められるようになることを「海明け」と言うそうだ。
 「『海明け』っては良い言葉だね」
 ずっと昔、流氷など見たこともない母が、何気なくつぶやいた言葉が、今も耳に残っている。

 今日は、北海道を低気圧が通過中で、湿った雪と冷たい雨が交互に降ってくる。
 生命が躍動する春へ、「ため」を作っている天候だろうか。

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