2012年4月15日日曜日

マガンの迷惑 高速道路

昨日の夕方、道央自動車道を旭川から札幌に向かっていた。
 道央自動車道は石狩平野を南北に縦断している。
 美唄を過ぎ、岩見沢に近づいた時、マガンの群れが高速道路を横切るのが見えた。
 渡りの飛行ではなく、一つの餌場から別の餌場への移動らしく、あまり高く飛んでいなかった。路面から十数メートルくらいの高さだろうか。

 マガンはとても律儀で、餌場を替えるようなちょっとした移動の時も、一文字形かV字形のきちんとした編隊を組んで飛ぶ。
ところが、マガンの編隊が高速道路上にさしかかった時、その隊列が乱れてバラバラになったのだ。

 想像だが、高速道路を走る車が作る空気の渦が道路の上空の気流を乱しているのではないだろうか。

 その後、マガンたちは、何も無かったかのように編隊を組み直して飛び続けて行った。「飛行術のプロ」として、「あんなものは気にしてないよ」という表情をしていたように感じたが、僕は心の中でマガンたちに詫びた。

 人間は自然に対して、なんと身勝手な振る舞いをしているのだろう。少しでも早く目的地に着きたいという欲望のために、何万年も前から石狩平野を往き来していたマガンたちに余分なストレスを加えているのだ。そして、それに気づくこともなく平気な顔で暮らしている。

 マガンは、その整然とした編隊飛行をするところや規則正しい渡りをすることが、昔から人々に知られ、絵画や文学に描かれてきた。興味深い言い伝えも多くあり、タンチョウと並んで日本人好みの野鳥である。
 そのように「自然を愛して」いながら、なんという惨い仕打ちをしているのだろうと悲しくなった。

高速道路がマガンの生命を脅かすほどの危険な存在になっているわけではない。実際には、われわれはもっと危険で過酷な仕打ちを野生動物に対して行っている。
 だが、「自然に優しい」などという曖昧でイメージだけが先走るような言葉を弄ぶなら、ガンの往来する平野に高速道を作って、後は知らんぷりというような態度が許されるわけはないだろう。

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