2012年11月10日土曜日
フユシャクの夜に
  激しい雨降りが治まったと思ったら、約束していたかのように寒波が来た。
 今朝、外気温は10℃あったが、どんどん下がり続け、昼には5℃を切った。
 今、夜の10時半。外気温は4℃である。
 阿寒からは初雪が降ったと知らせがあった。
 
 そんな冷え込みの中をフラフラと飛ぶ小型の蛾がいる。
 フユシャクたちだ。
 鮮やかな色をしているでもない。奇怪な姿をしているでもない。
 鱗翅目という大きく派手なグループの片隅にひっそりと属している。
 学者たちでさえその存在に気づかない種も含まれる。
 ひそやかな、ひそやかな生命。
 
 消化器も持たない。
 口もない。
  何も食べず、何も飲まず、
 ただ生殖のためだけに羽化した虫たち。
 動かぬ雌から発せられる
 かすかな匂い
 匂いとも言えぬ分子の震動を頼りに
 フユシャクたちが飛び回っている夜。
 しずかにしずかに更けていく
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿