2012年11月21日水曜日

僕が青年だった頃の選挙の思い出

 「今度の選挙は、誰にいれればいいの?」向かい側の席に座った年配の農家の婦人らしい人が、隣に座っていたその人の息子らしいサラリーマン風の男性に何気なく訊いた。  昔、僕が浪人して頃のことだった。  列車内で出会った光景だ。  しかし、次の瞬間、男性の答を聞いて、僕はびっくりした。  「ウン。まだ、組合からはっきり聞いてないんだ。明日あたり、わかると思う」  いつまで経っても忘れずに覚えているのは、この時の驚きのせいだと思う。 高校時代、「政治経済」という科目があった。  その中に「労働組合の政治活動」という単元があり、労働組合は特定の政党を支持するべきではない、と教えられた。  その時の試験問題だった「労働組合と政党の正しい関係について述べなさい」という問題に次のように解答して満点をもらったことを覚えている。  「労働組合は、労働者の生活と権利を守るための組織である。そのため、政治的な活動を積極的に行う必要がある。しかし、選挙で投票する対象や支持政党を決めるのは、あくまでも個々の労働者個人であり、個人の政党支持の自由は、基本的人権の一つとして最大限に尊重されるべきである。したがって労働組合は、各政党の政策や候補者に関する情報を組合員に積極的に提供すべきではあるが、決して特定の政党への支持や候補者への投票を組合員に求めるべきではない。」  そのような経験をした僕の目の前で、平然と「組合の指示で投票する候補者を決める」と言い切る男性。  さらに、(おそらく)自分が投票する候補者を息子の意のままに決める母親の実在は、少なからず衝撃的だった。  日本の民主主義とは、この程度だったのかと暗い気持ちになった。もう40年以上も前のことだ。  そして今、国民の投票行動は、少しは変わったのだろうか。日本の民主主義は僅かでも成長しただろうか。 率直に言って、あまり変わっていないように思う。 また、それが試されようとしているのだけれども。

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