2012年11月24日土曜日
「遺伝子組み換え」は昔からあったというお話
 先日、高校の「生物Ⅰ」の授業を見せてもらう機会があった。
  遺伝の単元でも最後の仕上げともいうべき「連鎖と組み換え」という節だった。
 授業をする先生の口から
「ここで言う『組み換え』とは、遺伝子組み換え食品の『組み換え』とは全く違う意味だからちゅういするように」という注釈を聞くまで自分で全然気づかなかったが、確かにその通りだ。
 「生物Ⅰ」で出てくる「遺伝子の組み換え」とは、減数分裂の時に二本の相同染色体が捻れて分裂することによって、それまで同一の染色体上にあった遺伝子が他の染色体に乗り換えることを言う。
 たとえば雌方の1番染色体にAとBという遺伝子があり、雄方の1番にはaとbがあったとすると、「A」と「B」は常に一緒に移動し、「a」と「b」も同様に振る舞うのが普通で「Aとb」または「aとB」という組み合わせは生じない。
 しかし、一定の割合で染色体が捻れたまま分裂し「Ab」または「aB」の組み合わせた生じることがある。これを「組み換え」と言うのだ。
 他に「乗り換え」とか「交鎖」と呼ぶこともあるが、この授業で使われている教科書では「組み換え」という言葉が使われていた。
 これに対して遺伝子組み換え食品の「組み換え」は、人工的に遺伝子を操作して、細胞の中の遺伝子の組成を換える操作のことである。
 この両者は全然関係が無い。
  関係のない二つの現象(あるいは操作)に同じ言葉を用いる無神経さに呆れた。
 もちろん前者(ややこしい説明を加えた方)の「組み換え」の方が古くから使われていた用語だ。
 最近になって出現した技術の名前は、もう少し配慮して、「組み換え」という用語を使うことは遠慮すべきだった。
 生物を教えていていつも感じていたが、日本の生物学用語は難しすぎる。日常生活では絶対に使わない語を多用している。
 たとえば、「採餌」は英語では「Feeding」という。なぜ簡単に「食う」と言えないのか。
遺伝学用語では、「検定交雑」を「Test cross」と言う。
  よく、「簡単なことを難しく教える日本の生物学」と授業中によく揶揄したものである。
 ちなみに「遺伝子組み換え」については、前者の「組み換え」を「Chromosomal crossover」後者の「組み換え」は「Genetic recombination」と区別されている。
 文科省は、日本の子どもの学力について「言語活動能力の低下」を指摘している。
 だが、教科指導に用いられる言語そのものが貧弱ではないか。
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