2012年11月20日火曜日

「風の谷のナウシカ」で授業する

 羅臼高校3年生、「環境保護」の授業で、今年度から「風の谷のナウシカ」を教材に取り入れた。  今年度取り入れたばかりだから、展開のし方や授業の形態に関して改善や工夫が必要だが、授業にマンガが入り込んだだけでも生徒たちは新鮮に感じるのだろう。真面目に熱心に取り組んでくれる。  つまりは「食いつきの良い」教材であるらしい。  しかし、その内容の深さと情報量の多さは、ちょっとした小説をはるかに凌ぐものがあり、マンガを読み進むうちに生徒たちは四苦八苦し始めた。  そこで、その内容について話し合う中で解りやすく解説してやったり、感想を聞き出したりしながら読み進めている。  授業は、いよいよ最終巻の第7巻に入った。  そこには、たとえばこんなくだりがある。 (以下漫画の台詞を引用する) 墓所の主:そなたたち人間はあきることなく、同じ道を歩み続ける。何度も繰り返された     道を。      みな自分だけは過ちをしないと信じながら、      拳(こぶし)が拳(こぶし)を生み、悲しみが悲しみを作る輪から抜け出せな     い。  ほんの断片の台詞だが、ここで昨日から今日にかけて報道されたハマスとイスラエル軍の戦闘の記事のコピーを配って、ガザで行われている戦闘によって市民が100人以上も犠牲になっている事実を教える。  この漫画が1980年代に書かれたものであることは、最初から伝えてあるが、あらためて再確認し、人間の「業」について考えさせ、感想を述べてもらうのである。  もちろん、「風の谷のナウシカ」の一部を切り取って、そこだけを取り上げるのではない。全体の流れの中から重要と思われる部分を取り上げ、そこを検討したうえで再度全体の流れに戻っていく作業を繰り返す。  この授業は、春からの地球環境に対してヒトがどのように関わり働きかけてきたかという環境史を学び続けてきた末に、「人間とはなにか」という最終単元の中に位置づけられている。  数学や物理のようにたった一つの正解に到達するという性格のものではないところがこのような展開を可能にしている。  正直に白状すれば、僕自身も生徒とともに学んでいる。学ぶところが大きいのだ。  「ナウシカの時代」はまだまだ続くように思う。

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