2012年11月6日火曜日

今夜、羅臼で「歌は風。沙漠も海も国境も軽々と越えていく」

 その歌手は、コンサートの終わりにこう呟いて、最後の曲を歌った。 彼女の歌は、羅臼町内にある小さな店いっぱいに、時には切々と、時には情熱的に力強く、また、時には底抜けに陽気に響きわたる。  伴奏のアコーディオンがヴァイオリンのように、あるいはラッパのように、またあるいは、打楽器のように歌に寄り添っていた。 昨日、突然、友人からこんなメールが届いた。 「ご無沙汰しています、突然ですが、明日なんと羅臼でロシアの囚人が作ったバラード というか、ブルース、ってジャンルがあるんですが、これを歌っている石橋幸さん、っ ていう人のコンサートがあるそうです!   この人新宿のゴールデン街でガルガンチュアっていうロシア業界じゃ有名な小さな店 をやっていて、ロシアに招かれてコンサートもやる有名な人です。(以下略)」  生きる苦しみと悲しみ、愛する歓び、人生のあらゆるシーンが歌になっていく。  それも当然。ほとんどすべてがロシアの歌でロシア語で歌われているのだ。  ロシア革命前、ツァーリ(皇帝)の支配するロシアで過酷な暮らしを強いられる人々。  ロシア革命によって、解放されたと思うのもつかの間、スターリンの独裁体制による監視と密告、厳しい文化統制で窒息を強いられる生活。  第二次世界大戦でのナチスドイツの侵略。2000万人もの犠牲者を出したと言われている。  そんな厳しい条件の中でも、時には官憲の目をかい潜り、時には国外から、人々を励ます歌が、風のようにロシアの大地に吹き続けていたのだ。 多くの日本人に親しまれているロシア民謡ではなく、ロシアの普通に人々の間で歌い継がれてきた歌を中心に、18曲の歌が歌われた。 昨日の夜に、このコンサートのことを初めて知ったのだが、即座に行くことに決めた。そして、しみじみと行って良かったと感じている。  帰りにクルマの中で、僕の頭の中では、うろ覚えのロシア語の歌詞がグルグルと回転していた。  このコンサートを企画してくれた羅臼のKさん。  そして、通訳仲間の友人からの情報をわざわざ僕に伝えてくれた親友のFさん。  もちろん、歌手の石橋幸さんとアコーディオン奏者の後藤ミホコさんに深い尊敬と感謝を捧げたい。

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