2012年1月26日木曜日

彷徨う氷群 流氷百話 6/100

流氷と一口に言っても様々な顔があると思う。
 流氷との「初対面」は、網走で見渡す限りの海面を埋め尽くしている氷だったが、根室海峡に面した羅臼の流氷は、海面の全てを覆い尽くすことはほとんどない。海に浮いている氷が風や波で西に東に移動する。風向きの影響で特定の海域に集中することはあるが、根室海峡を氷の塊が行きつ戻りつしていることには変わりがない。
前の日は、羅臼町の海岸に押し寄せ、激しく海岸線を圧迫していた氷が、一夜明けると跡形もなく姿を消し、向かい側の国後島の浜辺にへばりついている、などという現象は、毎年みられることだ。

 この動き回る氷のために、根室海峡の流氷には必ず開氷面があり、羅臼では、厳冬期でも漁船の操業が続けられている。もっとも風向きの急激な変化で、漁船が氷に閉じ込められる事態が、過去にしばしばあったようだ。
今は、天気予報の精度が向上したうえ、流氷の密度も以前より小さくなって、なかなかそのような事は起きなくなった。
 それでも羅臼海上保安書の巡視船「てしお」には砕氷能力を備えている。海上保安庁の巡視船で砕氷能力があるのは、2隻だけなのだそうだ。

 「流氷」とは「流れる氷」と書くのだから風と波のまにまに漂っているのが、僕の昔から描いている流氷のイメージだった。
 西へ東へ南へ北へと彷徨う流氷の群れというのは、意志を持った生き物のようで、神秘的な印象を増幅させる。

 とは言え、海に漂うのも流氷、海を覆い尽くすのも流氷。
 流氷もいろいろなのである。

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