2012年1月22日日曜日

流氷百話 3/1100

初めて流氷を見たのは大学生の時だった。
 函館で生まれ育った僕は、大学に入るまで北は旭川、東は帯広までしか行ったことがなかった。
 「網走」「美幌」「別海」とか「稚内」、「浜頓別」「紋別」などという地名には、本州の人々の感じる「はるかな地」というイメージと同じ印象を持っていたと思う。 
だから、当然流氷など見る機会はなかった。

 大学2年の頃だったか、友人に誘われて2月の網走へ行くことにした。
 急行「大雪」という夜行列車だった。
 ちょうど吹雪の日に当たっていたらしく、その「大雪」は遅れに遅れ、夜が明けてかなり時が経ってから遠軽駅に転がり込むように到着し、そこで運転打ち切りとなった。
 その後、北見までの普通列車に乗り、北見からは代行バスで網走へ向かった。

 雪で、列車が遅れたり運休したりすることが日常的にあるということが、当時の僕には考えられなかった。
 今、この地で暮らしていると、そんなことは当たり前で、
 「所詮、ニンゲンは自然の力には勝てないのサ」などとエラソーに言葉にしているが、このことを考えると、ちょっと気恥ずかしい。

 列車代行バスは、夕方、網走に到着した。札幌からほぼ24時間近くかかったことになる。

 着いてみて驚いた。海が無い。
 海岸だと言われている場所に立ってみても、見渡す限り白い平原が続いている。

 氷がプカリプカリと浮かんでいる海を想像していた僕は、ここでまた、自分の印象を修正することを迫られた。
 次の日も、その次の日も、海の風景は変わらなかった。
それは、なんとなく見る者を威圧するかのような風景に感じられた。

 これが、流氷との初めての出会いである。
 その時は、この流氷の来る海のそばで、生涯の大半を過ごすことになるとは、まだ思ってもみなかった。

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