2012年3月20日火曜日

知のパニックと言葉の暴走

歳のせいだろうか。
 互いに貶め合うような言葉の創造に、気持ちがついて行けない。

 「放射脳」なのだそうだ。
 放射性物質の影響を必要以上に恐れる思考に走る人たちのことを言うらしい。

「はてなキーワード」によれば、
【福島原発事故以来、頭がおかしくなって、何でもかんでも「放射能が悪い! 東電・政 府が憎い!」という思考に走るようになった人たち。】のことだとされている。
 悪意に満ちた揶揄だと思う。

 放射線は、目に見えない。放射性物質は、普通の分析では検出不可能なほど微量でも、強い放射性線を出すから、その質量に対する毒性の強さは、有害化合物とは比較にならないほど強力だ。  
ただ、放射線には、多くの種類があり、生体への影響も異なる。障害がすぐに顕れる場合と数年・数十年経ってから顕れる場合とがあり、学者の間でも論争が治まっていない。そして、その学者たちの多くは、それぞれが権力や資本、権威などという「真理」とは無縁のものと結びついている。マスコミも同様だ。

 このような状況で、何も知らない、何も知識をもたない国民は、何に依拠すれば良いのだろう。ただ不安だけが増大していく。いわば、知のパニックが起きている。

 現実に、事故現場近くで生活し、放射線に弱い子どもを抱える母親達が、被曝の影響を恐れるのは当然で、その恐れ方が、多少神経質だったり飛躍があったとしても、周りの者は、その恐れている感情にまず、寄り添うべきではないだろうか。

 「放射脳」などという言葉を作り出し、カテゴライズし、侮蔑するのは、誤った原子力政策を推し進め、これからも推し進めようとしている勢力を勢いづかせるだけではないだろうか。

 言葉は生き物だ。一つの新しい言葉が生まれ、その言葉が現実の状況の一部を言い当てていていると、あっという間に広がるという現象は、以前からあった。
 やがては泡沫のように消えて無くなる言葉が大半であろうが、様々な淘汰を経て定着する言葉あるだろう。

 だが、「放射脳」は、最初から悪意と敵意を込められて生み出された言葉のように思えてならない。
 事実を正確に言い当てていない言葉は、消え去るのも早いとは、思うのだが。

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