2012年3月8日木曜日

アザラシ 流氷が連れてきた動物たち③ 流氷百話 18/100

今日は、羅臼高校の一年生たちと海ワシ観察のための船に乗った。
 船に乗ると、流氷の上のオジロワシやオオワシを近くで見られる。
 今日は、流氷が港の中にまで入り込んで、船が思うように航行できない状態だったが、
生徒たちは、船長の毒舌とともに、海の上での野鳥観察を楽しんでいた。
 流氷が、もう少し沖にあれば、流氷帯にいるアザラシなども見ることが出来たかも知れないのだが、ちょっと惜しい気がした。
 
 オホーツク海沿岸に来るアザラシで、数が多いのはゴマフアザラシとクラカケアザラシだ。両種とも流氷上で出産する。流氷上で出産するアザラシの仔は、全身が白色をしている。写真やぬいぐるみでなじみ深いことだろう。
 ちなみに、沿岸の岩礁上で出産し、一年中道東の沿岸にいるゼニガタアザラシの仔は茶色で、白くはない。

 クラカケアザラシは、観察機会は少ないが、生息個体数は、少なくない。沖にいるアザラシだからだ。「クラカケ」は、漢字で「鞍掛け」と書く。オスの背中に鞍を載せたような帯状の模様があるので、こう名付けられたのだろう。英語では、リボンシールと言う。
 このような模様のアザラシは、他にはいない。

 流氷とともに知床にやってくるアザラシには、他にアゴヒゲアザラシ、ワモンアザラシなどがある。トドやオットセイも観察できるが、アザラシの仲間とは言わない。アザラシはアザラシ科でトドやオットセイはアシカ科ある。同じように見えるかも知れないが、違う仲間だ。アシカ科の仲間は小さな耳介(じかい=みみたぶ)が付いているがアザラシにはない。陸上を移動するとき後ろ足を使うのがアシカ科、身体を滑らせるように移動するのがアザラシ科だ。
 水中でもアザラシは全身を魚のような形にして泳ぐが、アシカの仲間は、鰭(前足と後ろ足)を上手に使って、泳ぎ回る。

 アザラシ科もアシカ科もイヌやネコと同じ食肉目(最近は「ネコ目」と呼んでいる)で、イヌに近いと言われる。確かに頭蓋骨を比べると大きさも形もイヌとよく似ている。
 イヌの中には、アザラシの顔真似の上手い個体もいる。

 進化の過程で、魚類だった脊椎動物が陸上に上がり、両生類→爬虫類と進み、最後に鳥類とほ乳類が現れたのだろう。陸上生活に適応したほ乳類の中で、海に戻ったグループがいくつかある。
 真っ先に思い浮かぶのはクジラの仲間だ。そして、アザラシやアシカたち。
 アシカとアザラシの違いは、海へと回帰した時期のちょっとした違いからきているのだろう。

 それにしても、クジラも含めてせっかく?陸上生活に適応した彼らは、なぜまた海へと帰って行ったのだろう。
 海よりも陸は環境の条件が過酷だ。温度変化も激しい。紫外線も強い。放射線も強い。まさかそれらに嫌気がさしたわけでもないだろうが。

 流氷の海岸に立って、進化の歴史を考える時もある。

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