Dies irae
背表紙は
水色に
変わっていった
日に
焼け残ったインクの色
忘れられた部屋の空気にも似ている
それは黴のにおい
凝固した過去のにおい
植民地であった
基地が作られた
記憶のにおいかもしれない
ふと一冊の本を手にする
水色の背表紙と
鮮やかな対比をなす
表紙を開けば
黴のにおいとともに
たち上る
あの日の思い
別のあの日の記憶
さらに別のあの・・・
いつの間に
日に焼けた背表紙の中に
閉じ込めてしまったのか
そんなことをしては
いけなかったはずなのに
もう一度
埃を払って
ここにある本たちを
すべて開いてみなければならぬ
閉じ込められている
全ての情念を
解き放たなければならぬ
ならぬ
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