2011年3月9日水曜日

Dies irae (怒りの日)

  Dies irae

 背表紙は
 水色に
 変わっていった
 日に
 焼け残ったインクの色
 忘れられた部屋の空気にも似ている
 それは黴のにおい
 凝固した過去のにおい
 
 植民地であった
 基地が作られた
 記憶のにおいかもしれない

ふと一冊の本を手にする
 水色の背表紙と
 鮮やかな対比をなす
 表紙を開けば
 黴のにおいとともに
 たち上る
 あの日の思い
 別のあの日の記憶
 さらに別のあの・・・
 
 いつの間に
 日に焼けた背表紙の中に
 閉じ込めてしまったのか

 そんなことをしては
 いけなかったはずなのに

 もう一度
 埃を払って
 ここにある本たちを
 すべて開いてみなければならぬ
 閉じ込められている
 全ての情念を
 解き放たなければならぬ
 ならぬ

0 件のコメント:

コメントを投稿