荒れ気味の根室海峡で、船は不規則に大きく揺れながら、シャチの群れを待った。
日ロの中間ラインの向こう側、つまりロシア側の主張するロシア領海にいたシャチの群れは、始めのうち2マイル(約3,6km)ほど離れていて、双眼鏡でしか確認できない大きさだったのだが、ゆっくりと近づいて来、やがて船のすぐ近くに現れた。
シャチは、ニンゲンの精神に棲み着く生きものだと思う。
初めてそれを見ると、その姿は無意識の世界に刻印される。
人々は、自分の一生の目的の重要なひとつに、シャチを観るというテーマを据えるようになるのではないだろうか。
そしてさらに、一部の人は、そのことを自分の仕事として位置づけてしまう場合もあるようだ。
いずれにしても、この海のどこかに、
あの巨大で、圧倒的な力を秘めたシャチたちが遊弋している、という意識が
心の深い所に刻み込まれてしまう。
ヒトというほ乳類の、力の限界を自覚し、自然を謙虚に見ることができるようになるためには
シャチの力は絶大だと思う。
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