2013年5月15日水曜日

酪農地帯の神社は酪農地帯に相応しい装い

 今日の午後、別海町の文化財保護審議会があった。 その席上、旧西別神社(現別海神社)祠(ほこら)が別海町歴史文化遺産として認定された。  この祠は、昭和9年(1934年)に、建造された西別神社(現別海神社)の本殿として鞘掛けされて使われていた。「鞘掛け」とは小さな建物を大きな建物でスッポリと覆うことだそうだ。  西別神社は昭和3年(1928年)に建立されたもので、その時からこの祠が使われてきたもので、少なくとも建造から85年は経っていることになり、たいそう古いものだということがわかる。   会議が終わってから現物を確認するために別海神社まででかけた。  祠には、本殿の横の手前に建てられており、しめ縄が張られていた。  不信心な僕は、神社になど来ることはほとんど無い。良い機会だと思い、祠や本殿の建物をじっくり観察した。すると、普段は見過ごしているいろいろな発見があった。  その一つがここに張られていたしめ縄である。最初は全然気づかなかったのだが、よく見るとこれがトワインでできているのだ。トワインというのは、牧草をまとめたものを縛るナイロン製の紐のことだ。牧草は、今はほとんど機械で巻いて大きなロールにする。昔は、人が持ち運べるくらいの大きさのコンパクトと呼ばれる立方体の形にまとめた。どちらにしてもナイロンを撚り合わせた細い紐でまとめる。  別海の主要な産業は酪農だ。ウシを飼い乳を搾るのだが、冬の間の主要なエサは乾草だ。そして、乾草を作り蓄えておくのは春から秋までの間だ。酪農とトワインは非常に深い関係にある。  しめ縄というのは内地では稲ワラで作るのではないだろうか。それが普通のことだと思っていた。米の獲れない根釧原野でも、神様を飾るしめ縄くらいは、遠くで求めた稲ワラを使っているものと思い込んでいた。  だが、この祠だけでなく本殿の正面に張られた大きなしめ縄もやっぱりトワイン製なのだ。  このアイデアに思わず頬が緩み、神様も粋だなと思った。地元の人々の生活を守るのだから地元で使われる材料でしめ縄を作るべきなのだ。氏子に過大な負担をかけてわざわざ遠くから稲ワラを求めることを潔しとしないということだろう。  稲ワラのしめ縄は、稲作地帯で大量に生み出されるイネの茎を利用して作られる。酪農地帯では、その地で大量に余る使用積みのトワインを使ってしめ縄にするのは、きわめて理に適っていると言うべきだろう。  それに、石油製品のリユースという資源の有効利用にもなっている。これこそ地元の特色を生かしている好例ではないだろうか。  これまであまり関心のなかった神社が、突然身近なものに思われた今日の体験だった。

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