きょうの「海洋生物」で次のような話題を取り上げた。
海の動物は陸上の動物に比べてより複雑な生態系の中で生きている。
なぜなら海の中は陸上に比べて圧倒的に生物の種類が多い。つまり種の多様性にとんでいる。したがって食べる・食べられるの関係が陸上よりもずっと複雑で、生物同士が複雑に絡まり合っている。
簡単に例えてみる。
牛肉を食べる場合、「植物(牧草)→ウシ→ヒト」という図式が成り立つ。
では、タラを食べる場合はどうか。
「植物プランクトン→動物プランクトン→小型魚種(イワシ・コウナゴなど)→中型魚種→タラ→ヒト」となる。
ウシなら三段階、タラなら六段階だ。
環境中の汚染物質が、上位の消費者に行くに従って濃縮されていくことは、生物濃縮と言い、よく知られている。
単純には比較できないが、海水中に満遍なく広がった有害物質が、上位者に行くほど濃くなっていくということだ。
水俣病など水質汚濁に起因する公害はこうして発生した。私たちはそういう経験を持つ。
放射能についても同じ事が言える。
福島第一原子力発電所から40キロメートル離れた海底の泥から、通常の100倍から1000倍のセシウムなどが検出されたと報じられている。
これが海の複雑な食物網で濃縮されると考えるのが普通だろう。
東京電力の原子量発電所事故の影響は、これからジワジワと広がってくることになる。
これに関連して理屈っぽいお話をもう一つ:
ここにコップ一杯の水がある。これを海水に混ぜ、まんべんなく混ざり合った場合、最初のコップに入っていた水の分子はどのくらい広がるだろう。
放射能で汚染された水を海に流した時、原子力保安院のヒトが
「汚染水は海の水と混ざり合って拡散するから何ら問題はありません」と言い切った言葉がまだ耳に残っている。
地球上の全海水量は約140京トンあるのだそうだ。(ウィキペディアより)
140京トンは1.4×10の24乗グラムになる。
コップ一杯の水は180mlつまり180グラムとする。
つまり10モルだから6×10の24乗個の分子がコップの入っていることになる。
(アボガドロ数を6×10の23乗とする)
当然ながらその比は
地球上の全海水:コップ一杯の水=1.4×10の24乗(グラム):180(グラム)となる。
分子量を18とすれば
地球全体の海水は、
8×10の22乗モルであり、分子の個数に直すと4.8×10の46乗になる。
仮に汚染されたコップ一杯の水を海に流し、海水と完全に混ざり合ったとする。その後、海水を同じコップですくい取る。その中に元の汚染された水の分子が何個含まれているかを計算する。
コップに戻ってくる水分子の数をxであらわす。
比例式を建てて
全海水の分子の量:汚染された水の分子の量=4.8×10の46乗(個):x(個)
比例式を建てて
地球全体の海の水分子の量:コップ一杯の水分子の量
= 汚染された水分子の量:コップに戻った汚染水の分子の量
4.8×10の46乗(個):6×10の24(個)=6×10の24乗(個):x(個)
計算すると
x=750となる。
つまりコップ一杯の水を海に混ぜ、完全に混ぜ合わせたと、再びコップですくうと、元の水分子が750個戻ってくる、ということだ。
これは世界中どの海水にもこれだけの割合で、最初のコップ一杯の水分子が混じることを意味する。
もちろん、これば水分子の話で、そこに混入している放射性物質の分子(または原子)の数はもっと少ないから、これをそのまま放射能汚染の広がりに当てはめるわけにはいかない。
しかし、一度汚染された物質を環境に捨てると、その影響は思いのかほ広がるということなのである。
あの「ホアンイン」の担当者は、この程度の小学生並の比例式を理解した上でああいう発言をしたのだろうか?
そうであってほしいのだが。
「ホアンインゼンインアホ」という回文が小学生の間で流行っていると聞いた。
まさか、と思いたい。
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