2011年5月18日水曜日
ヒグマと放射能
今日、授業でルサ川へ行ったら大きめのヒグマの足跡を見つけた。
後肢のものらしい。
普通、クマの足跡は横幅を計測してその「持ち主」の大きさを推定する。
写真に写っている携帯電話の長さは、約12センチメートル。したがって、この足跡の幅は約15センチメートルということになる。15センチメートル以上は雄の成獣だと言われているから、この足跡の主も雄の成獣かも知れない。
ヒグマの高密度生息地域に接する町で育った高校生たちとはいえ、こんな足跡をしげしげと眺める機会はほとんど無く、生徒たちは、足跡から直に伝わってくる「山の神」の威厳感じ存在感を畏れ、強い印象を受けた様子だった。
(「クマのお陰で良い授業になった」と授業を行った側としてもクマに感謝している)
クマを見る機会は非常に少ない。
まるで居ないかのようだ。
そのため、内地から来る観光客の中には、クマの存在を意識せずに、よく出現する場所に平気でテントを張ろうとする人々もいる。時々いるのだ。
だが、間違いなく知床の山には、たくさんのクマたちがひっそり息を潜めるようにして暮らしている。
ニンゲンに、その気配をさえ気取られぬよう細心の注意を払って行動しているように思う。
そして、時々、その存在の証をわれわれに見せる。
ふと気が緩んだ瞬間に、見せたくなかったものを見せてしまう失敗のように。
普段は存在しないかのように振る舞っていて、ふとした時にそれを知られてしまうような存在。世の中にはこいう存在のしかたもある。
原子力発電所から飛び散った放射能もこのような存在だろう。
欲の皮の突っ張った姑息なニンゲンの作った原子力発電所、生命活動ともっとも無縁な原子力発電所からまき散らされる忌まわしい放射能と、アイヌ民族が「キムンカムイ(山の神)」と呼び、最高位の神の一つに位置づけていたヒグマとを一緒にしたら、ヒグマたちからクレームが集中するかも知れない。
もう、怖くて知床を歩けなくなるだろうか?
いや、そうではあるまい。
あくまでもヒッソリと暮らしている熊たちが、急に自己主張し始めることはないと考えられるから。
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