2011年6月14日火曜日

羅臼湖






 今日、羅臼湖へ行って来た。

 昨夜は一晩中雨が降っていたが、低気圧の通過が予想より早く、僕らの行動中には、降雨を一段落させるように小さな高圧帯が通過していたようで、羅臼湖は霧に包まれながらも微かなほほ笑みをみせてくれた。

 先週来た時とに比べてヒメイチゲの花が多くなった。
 チングルマも咲き始めていた。
 羅臼湖近くのエゾヤマザクラが咲いていた。
 コヨウラクツツジの花も一つみつけた。
 コケモモも一輪咲いていた。
 遅い歩みながら確実に季節を巡らせていた。

 今日の羅臼湖行は、「羅臼湖会合」による今年度第一回目の羅臼湖現地踏査だ。
「羅臼湖会合」は、羅臼湖へ新しいルートを設定するため、その具体的な検討を行うための会議である。
メンバーは山岳会、観光協会、遺産協議会、ガイド協会などさまざまな団体や個人だ。 朝、集まった顔ぶれを見ると山男系と観光協会系の二種類に分類できそうだった。
 山男系は、ただひたすら知床の山が好きで、山から山へと歩き回っている山賊のようなムサイ男とたちが多い。
 観光協会系は、日常的に観光客を受け入れ、接客している人たちで、なんとな言動が洗練されている。また、観光協会系の人たちは、地元で生まれ、育った人が多く、みずからの郷土の美しさ、素晴らしさを多くの人々に知ってもらいたいという気持ちにあふれているようだ。
 両者の価値観に微妙なズレがあるのだが、それでも新ルートの検討を共同作業として一緒にできるところに、この町の良さがあるのだろう。

 地元で生まれ育ったKさんなどは、普段は立ち入りが禁止されている湿地や雪渓の上を転げ回るようにうれしそうに走り回っていた。
 そんな彼が、何気なくつぶやいた。
「これこれ。この景色をお客さんに見せてやりたいんだよなぁ」
 これの思いが伝わってくる一言だった。

 一方、山賊の連中は、あまりホスピタリティは持ち合わせていないようで、
 「この部分はコースがお花畑に近づき過ぎているから、写真を撮るヤツらに踏み荒らされる恐れがある」とか、
 「ここに展望台を作ると、あの樹が邪魔になって枝を伐るヤツが必ず出てくる」などと「観光客性悪説」を前提とした発言が目立った。

 利用と保護の両立と言うのは簡単だけれど、現実にはなかなか難しい。

 僕も羅臼湖へ通うようになって30年になる。30年間に徐々にではあるが、植生が変わってきているのも事実だ。それも良くない方向へ。
 植生変化の原因は、必ずしもハッキリとしている訳ではないが、ニンゲンの影響が無いとは言えない。

 そして、何万という単位の観光客が入り込むことによってズタズタにされたウトロ側の知床五湖の実例を見ているから、羅臼湖の姿をこのまま永くとどめたいと強く願う。

 今日は、登山道を歩きながらふと孫のことを考えていた。
 十数年後か、あるいはもっと先、孫たちがこの道を歩きながら、僕のことを思い出してくれないかな、と。
 「このルートを決める時に、あの人も関わっていたんだ」などと。

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