2009年7月14日火曜日

シンジャン(新疆)が気になる

 2005年、ウルムチまで行ってきた。一人旅だった。
 北京→西安→ウルムチ と進むとユーラシアの核心に近づいている、ということがよく感じ取れる。どんどん樹木が少なくなる。
 シンジャン(新疆)の中心都市ウルムチは、ユーラシアでもっとも海から遠い町、と言われている。空港から町までバスに乗った。ウルムチに近づくにつれ、だんだん英語が通じにくくなっていくのだが、空港で近くにいた人に
「このバスはウルムチの町まで行くの?このホテルに行きたいんだけど」とたずねてみた。
 その人は、あまり英語が得意ではなさそうだったけれど、近くにいる人にきいてくれた。そして、少し後、
「このバスに乗って運転手の言うバス停で降りてからタクシーに乗れば、すぐ着くから」と教えてくれた。そして運転手に対して
「このお客を、その停留所で降ろすように」と何度も念を押してくれた。
濃い茶色の髪で緑色がかった瞳をし、目鼻立ちのくっきりとしたウイグル族の女性だった。

 ウイグルの人々の多い市場で買い物もした。ウイグル人の被る帽子を買った。店番のおじいさんは、手振りで帽子のたたみ方や格好いい被り方を教えてくれた。
 買い物をする時、高い値段を言う。値切るとまけてくれる。値段の交渉も買い物のプロセスの一部なのだ。一度値段を決めると、きわめて友好的で、釣り銭を誤魔化すなどということはまずないようだ。
 ウイグルの人たちとは、ウルムチのいろいろな場所でお世話になったと思う。仲良くなった人もたくさんいる。

ウルムチで、ウイグル族が苦しんでいる。歴史的にもずいぶん苦労をしてきているらしい。中国という国家を他の民族とともに作り上げていくのいいのか、ウイグル族独自の国家を打ち立てるのが良いのか、政治的な問題もあり、僕にはどちらが良いのかわからない。

 だが、とにかく、僕に親切にしてくれた人たちをはじめ、ウイグルの人々全部に禍が及ばないように、祈らずにいられない。

2009年7月13日月曜日

川の勉強



 猛烈な雨が断続的に降り続く一日だったが、その間隙を縫うようにしてルサ川で中高一貫の「生態系学習」というのをやった。対象は町内の中学2年生全員。
 川にはカワゲラの幼虫、トビケラの幼虫、カゲロウの幼虫、ヨコエビ、プラナリア、そしてもちろん魚類や鳥類などが生活し、上流から木の葉や枝、土砂などが流れ下ってくる。川底の石には藻類がビッシリと付いている。
 森と海を結ぶ物質の通り道であると同時に独自の生態系をもった世界なのだ。ふだん、学校では、特に小学校では「川に近づいてはいけない」と教えられてきた子どもたちに、川に入って生きものを探しなさい、という指示は何よりも歓迎されたようだ。雨に濡れ、靴に水が入ってくることも厭わず、川の中ではしゃぎ回る姿を見ていると、自然と子どもを切り離してきてた大人の罪を感じてしまう。

アルクティカ またまた

7月12日(日)
アルクティカ また
 突然パワーが消えた。エンジンの回転は変わりなく続いている。床を何かがゴンゴンゴンと叩いている。
 すぐに原因はわかった。シャフトだ!
 路肩に寄せ、床下をのぞいてみた。案の定だった。
 常時四輪駆動であるアルクティカには、駆動するためのシャフトが2本ある。
 レッカーの手配。現場位置の正確な連絡。代車の要請。路上で故障したときの対応は慣れたものだ。(こんなことに慣れてどうする!)
 現場は釧路市の近くだったが、中標津の修理工場の人が迎えに来てくれた。不幸中の幸いである。
 シャフトが外れた場合、外れたシャフトが振り回されてあちこちの部品を傷めることがあると聞いていた。今回は、幸いなことにそれは避けられたようだ。
 それにしても、またまた、修理だ。ため息。

2009年7月11日土曜日

エスカロップ事件

 昨日、イタリアンレストランで美人と向かい合っていた。モッツァレラインカロッツァのサラダ、スモークサーモンとほうれん草のクリームパスタなどを注文し、豊かな時を過ごしていた。誕生日の前夜祭だ。
 最後に僕はコーヒーを飲むことにした。イタリア風ならやっぱりエスプレッソだべ。この時、ジョークをひとつ思いついたので口にしてみた。
「あのウエートレスさんの所にツカツカと近づいてさ、『スミマセン、エスカロップひとつお願いします』って言ったらビックリするだろうね」
「案外『わかりました』と言って、エスカロップがそのまま出てきたりしてね」
 エスカロップというのは、根室以外に居住しているヒトにはわかりにくいかもしれない。根室独特のメニューで、バターライスの上にトンカツを載せ、デミグラスソースをかけた食べ物のことだ。 

 他愛ない会話をしているとウエートレスさんが食器を片付けに来た。気を取り直して食後のコーヒーを注文しようとして声をかけた。
「あのぉ、エスカロップひとつお願いします」
ウエートレスさん、目をまん丸くして驚き、次の瞬間には僕らも彼女も吹き出した。

 大失敗。

2009年7月10日金曜日

気象通報

 昨日とは正反対の寒い、雨降りの日であった。
 雨は未明に降り始め、午後に入ってもまだ降り止まなかった。

 いま、「野外活動」という科目で天気図を描く実習をさせている。ラジオ(NHK第二放送)の「気象通報」を聴いて、天気図用紙に各地の天気、風向、風力、気温、気圧、低気圧や高気圧の位置、前線や等圧線の通っているポイント、などを記入して天気図を描く。集中力、瞬間的な判断力、推理力など知的な総合力を必要とする。遠い昔、自分も通ってきた道だ。熱心に取り組んでいる高校生の背中を見ていて、ふと過去を懐かしむ気持が湧いてきた。
 ああ、はるかはるかな昔のことだったなあ。 

2009年7月9日木曜日

暑い一日

 暑い一日だった。
 バイクで出勤。

 一人暮らしになってイヌもネコも置き去りにされることが多くなった。最低限散歩や餌、トイレの清掃などはやっているが、ヒトとの接触が減っていて、かれらを見ていると、なんとなく不満そうだ。
 ヒトは、彼らから精神的に慰められたり勇気づけられたりしているわけだが、彼らだってヒトとのふれ合いから何かの力を得ているのだろう。

 明日から週末。じっくりと遊んでやろうと思う。

2009年7月8日水曜日

探鯨譚(クジラをさがす話) その9


 クブイリチーを作った。
 コンニャクや蒲鉾、肉などを炒め、コンブを加えて煮込んだ沖縄の家庭料理だ。知床概論Ⅲで昆布の勉強に入った。羅臼で採れたコンブが、どのように消費されたかを考えることが目標で、大きな消費地の一つの沖縄でコンブがどのように利用されているかを教えたかった。
 黒板に「クブイリチー」を書くだけなら簡単だ。こんな料理でこんな味なんだ、と実物を突きつけてやるのもたまにはいいだろう。
 生徒たち、美味しそうに食べていた。心底美味しそうに食べている様子を見て、僕の方がビックリした。
 まあ、隣の教室で
「サインシータが…」とやっている隣で、何か食べるというのは、実際よりも美味しく感じることだろう。


探鯨譚(クジラをさがす話)  その9
 今朝も羅臼でもっとも生きの良いホエールウォッチング船「E号」は出港して行った。今にも雨が降り出しそうな空もようだ。今日の航海には、東京から来たお客さんが乗っている。北海道、中でも道東に強い憧れを持ち、何度も訪れてきたが、羅臼に来るのは初めてということだった。もちろんクジラを観に行くのも初めてとのことだ。初めて訪れた者に対しても根室海峡は不機嫌で、濃い霧が海面を覆っていた。
 昼過ぎ、港に帰ってきた彼女に聞いたところ、霧であまり見えなかったが船の間近でマッコウクジラを一頭だけ観ることができたということだった。船長も諦めかけていた時に好条件で一頭観られたということがかなり嬉しかったらしい。興奮気味に話していた。
 クジラも海も気まぐれな自然で、ニンゲンは、自分の都合をいかに主張しても受け付けてもらえない。自然の状況をただ受け入れるしかない。クジラを探して海に出ても、いつでも会えるというわけではない。
 仏教用語だと思うが「寸善尺魔」という言葉ある。「善なるものはわずかで魔なるものの方がずっつ多い」という意味だ。根室海峡のクジラは、「寸鯨尺霧」とでも呼んでいいのではないだろうか。