2011年4月26日火曜日

水によせて




 毎年、この時期にはシラカバから樹液を採取している。
 一晩で500ミリリットルくらいは採れる。

 シラカバが、今年の新芽を育てるために大地から枝先に向かって吸い上げる水を少し分けてもらうのだ。

 微量の糖分を含んだ水は、口の中でかすかな甘みを感じさせるが、ほとんど無味無臭で「透明な味」だと思う。
 おそらく、水としては最高級だろう。

 朝、起きてすぐ外に出る。取れたての水を一口飲むと、一日中元気でいられるように思う。今朝はウグイスが鳴いていた。(今年の初鳴きである)
 コーヒーを淹れるのに使っても良いし、煮詰めてシロップを作ることもできる。
 何よりも好きなのは水割りだ。普段は水割りあ飲まない僕も、この季節だけは例外だ。水割りが楽しみになる。(ウイスキーが楽しみなんだろ、という声もあるが)

 福島第一原子力発電所では、大量の水が放射能で汚染されて存在する。それに比べて一本のシラカバが吸い上げる水の総量はささやかなものだ。
 そして、そのお裾分けをもらう僕のペットボトルに貯まる水の量など、ゼロに近い。
 そんな、ごくわずかの水をもらっても、シラカバへの深い感謝の気持ちが湧く。

 福島では、炉心冷却のため量の水を注入し、まだ足りないようだ。あまつさえ汚れた水を平気で海にたれ流している。
 水や、その源の海への感謝や畏敬の念は持ち合わせていないのだろうか。
 自然への感謝の気持ちを持たない者に、自然は何度も警告を繰り返すだろう。

 今回の事故の背景に、このような寒々としたココロの風景があるように思う。

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