2012年2月7日火曜日

流氷の民 流氷百話 11/100

網走市にモヨロ貝塚という大きな遺跡がある。
 そこはオホーツク文化期の代表的な遺跡として有名な所だ。

 オホーツク文化とは北海道のオホーツク海沿岸地方で、3世紀から13世紀頃まで海獣狩猟や漁労を中心とする生活を送っていた人々、オホーツク文化人(またはオホーツク人)たちの文化で、その頃の北海道には続縄文文化とそれに続く擦文文化が併存していた。

 オホーツク文化人は、3世紀頃、サハリンから宗谷海峡を渡ってやって来た人々であったと考えられている。 オホーツク文化人の遺跡は、13世紀以後、忽然と姿を消している。
 謎の多いオホーツク文化人だが、その遺跡は流氷がやって来る地域にしかない。おそらく彼らの行う海獣猟は、流氷が押し寄せ、波が静まった海にカヤックを漕ぎ出して行われたのだろう。もちろん、その獲物であるアザラシやトドも流氷が連れて来る。
 つまり、オホーツク文化人は流氷に依存して暮らした「流氷の民」なのである。
  
 彼らの使った道具に描かれた精密な動物模様や独自の土器の装飾などが、北海道で昔から暮らしていた擦文文化の人々と間で融合して新しい文化(トビニタイ文化)を生み出したとされている。
やがてそれはアイヌ文化に受け継がれていくと言われている。

 海岸に立ち、流氷の軋む音に耳を傾ける。オホーツク文化人も同じ音を聞いて暮らしていたに違いない。
 文明は自然を改変し、様々なモノを作り出したが、流氷が作る海の景色、流氷を渡ってくる風は、その時代と同じなのである。

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