2012年2月13日月曜日

流氷の紋所 流氷百話 13/100

海岸から流氷のかけらを取ってきて、冷蔵庫で作られた氷と並べてみる。
 見かけ上、ほとんど違いはわからない。
 以前にも書いたように、舐めてみてもわからない。

 北海道大学の低温研出身の友人から聞いたのだが、これらの氷を薄く切り取って顕微鏡で見れば、両者の違いはすぐにわかるのだそうだ。

 その理由は、流氷に切片には「ブラインチャンネル」と呼ばれる縦方向の細かな筋が無数に入っているからだという。
 流氷は、表層の海水が凍って生まれる。「海水が凍る」と言っても海水のうちの純粋な水だけが凍る。凍りつつある流氷の中で、水に溶けている塩分は濃縮されていく。(この濃縮された海水を「ブライン」と呼んでいる)塩分濃度の高くなった海水は次第に比重も大きくなるからやがて下に向かって流れ出で行く。
 この最後に濃い海水が流れ落ちた跡がブラインチャンネルとして残るのだそうだ。

 以前、流氷の切片を偏光顕微鏡で見せてもらった時、ブラインチャンネルが明瞭に見えた。
 ブラインチャンネル。
 それは、その氷が由緒正しい流氷であることを示す紋章なのである。

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