2012年2月18日土曜日

水の不思議 その1 流氷百話 14/100


 「化学物質」という言葉があり、それは人工的に合成された物質をさすのようだ。だが、この言葉の意味するところは曖昧だと思う。なぜなら、人工的に合成された物質なら、「人工合成物質」などと呼べばいい。原子が(厳密には単一の元素から成っている「単体」が)化学反応によって結合して出来た物質はすべて「化学物質」と呼んでいいと思うからだ。
 もっとも、このような物質を学校では「化合物」と教えているはずだが。

 それは、ともかく、水が化合物であることは、皆に知られていることだ。それは水素と酸素の二種類の元素からできており、身近な、ありふれた物質だ。ありふれ過ぎている。珍しくもないし、危険性もない。毒性もない。値段も安い。

 ところが、実はこの世で水ほど奇妙な物質は無い。少なくとも多くの科学者は、そう考えていると思う。

 水は、他の物質と同様、三態を示す。水の三態とは、言うまでもなく氷・水(湯)・水蒸気つまり固体・液体・気体のことだ。そして、普通は、温度変化に伴って氷から水へ、水から水蒸気へ、またはそれらの逆方向へと状態が変わる。つまり液体を真ん中にして、低温では固体、高温では気体になる。

 ところが、液体を通ることなく固体から気体へ、または気体から固体へ直接変わることがある。これを昇華と呼ぶが、水でも頻繁に昇華がみられる。

 今朝、原野を散歩していると雪の割れ目に昇華によってできた結晶を見つけた。雪の結晶も同じなのだが、水は結晶になると羽毛状の繊細な結晶を見せてくれる。

 実は、水がこのような結晶を作ることと、アムール川河口で誕生した氷が、はるばるオホーツク海を渡って道東地方沿岸までやって来ることは、深い関係がある。
 流氷について語るとき、このことを知っておかなければならない。

 今日は、ありふれて平凡な物質である水のもつ非凡さの一つ、水の結晶について書いておきたかった。

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